研究課題/領域番号 |
23K12329
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永田 彰平 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (10966063)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 人流 / GPS / ウォーカビリティ / 空間的マイクロシミュレーション / 健康地理学 / 身体活動 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、大規模に取得されるGPSデータに基づき、移動・活動場所に基づくウォーカビリティと歩行量の関係を定量的に検討するものである。2023年度は、本研究課題の遂行にあたって、大規模GPSデータで得られる移動軌跡および歩行量のデータ整備を行った。具体的には、適切なGPSデータの選定および入手と、偏りのあるGPSサンプルの分布の補正である。 まず、適切なGPSデータの選定については、民間企業から提供されている複数のGPSデータの仕様を比較し、以下の基準を満たすデータを選定した。1:位置情報ログの取得間隔が1分間隔またはそれより細かい。2:特定の時間帯だけではなく1日を通して継続して位置情報ログが取得されている。3:位置情報ログに紐づく移動者の年齢、性別、および社会経済的な指標が収録されている。4:一部もしくはすべての位置情報ログに紐づく歩数情報が収録されている。上記の基準のもと、仙台市内で取得された2万人程度の1か月の位置情報ログを入手した。 ただし、入手したGPSデータは取得元のアプリケーションが限定されたため、GPSサンプルの分布が現実世界の人口分布と乖離している可能性があった。そこで、空間的マイクロシミュレーションを用いて、携帯電話の基地局で大規模に取得された携帯電話利用者の位置情報に基づく4次メッシュ別×時間帯別の人口分布と整合的なGPSサンプルデータ(合成人流データ)を構築した。上記で得られた合成人流データと携帯電話基地局データの4次メッシュ別×時間帯別人口分布の相関係数は0.99であり、極めて高い精度で人口分布が整合したと言える。この手続きにより、合成人流データに基づく移動軌跡や歩数とウォーカビリティの関係をそのエリアの代表的な傾向として解釈することが可能となった。 上記の取り組みに関連した学会発表や講師としてのセミナー発表を行い、研究成果の発信に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に選定・入手したGPSデータは、本研究課題の解析のために必要とした時間的解像度や位置精度の基準をおおむね満たしていたため、データに関連した想定外のエラーへの対応を最小限に抑えて研究を進めることが可能であった。また、当初の計画ではGPSデータのマップマッチングや歩行量の推定が必要となることを想定していたが、いずれも入手したGPSデータの仕様でカバーすることができた。加えて、上記の手続きで想定されていた作業時間分を、GPSサンプルの分布のバイアス補正に充てることができたため、計画時点では考慮できていなかったGPSデータの代表性の課題を解決することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の取り組みにより研究遂行のための基盤となるデータを構築できた。2024年度は、このデータを使用し、移動・活動場所に基づくウォーカビリティと歩行量の関係を解析する。具体的には、移動軌跡に人口密度、アクセシビリティ、および街路環境に基づくウォーカビリティ得点を付与し、居住地の近隣空間、移動空間、滞在空間のウォーカビリティ得点と歩数の関係を統計的に検討する。
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