研究課題/領域番号 |
23K12347
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
橋本 栄莉 立教大学, 文学部, 准教授 (00774770)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 西ナイル / 紛争 / 歴史 / 南スーダン / 神性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、西ナイル系諸社会における神性(神や精霊など)が、どのように人々の歴史経験や紛争経験の形成と関わってきたのかを明らかにすることである。 令和5年度は、これまで南スーダンとウガンダで行った現地調査で得た資料の整理・分析、および南スーダン地域や西ナイル系集団の歴史・民族誌的資料の収集・整理・分析を行った。この作業により、(1)西ナイル地域に伝わる神話や予言者によってなされた予言が、現在の南スーダンの軍事・政治情勢や、内戦勃発によって国外に逃れた難民のアイデンティティと深くかかわっていること、(2)植民地期以降に変化を遂げた「報復」の概念が、人々の社会生活において「近代」や「伝統」に与えられた価値と緊密に関わりながら、現代の紛争における人々の行動原理や紛争理解を形成していることを明らかにした。 (1)のうち、予言とかかわる問題については、紛争解決・平和構築と人類学のかかわりを特集とする学術雑誌に論考として投稿し、掲載された。また、(1)のうち神話と難民のアイデンティティ形成については、単著として出版した民族誌の一つの章としてまとめた。(2)については、アフリカの紛争と歴史のかかわりに関する論集において、一つの論考として掲載された。 以上の研究は、東アフリカ地域における紛争や難民の現状理解に対して意義を有することに加え、これらがいかに地域の歴史的状況の中で、人々の歴史解釈と関わりながら形成されてきたのかを明らかにした点で極めて重要であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画作成時に予定していた国外での現地調査が進んでいないものの、国内においても入手できる西ナイル諸社会における民族誌的史料、南部スーダン地域に関する史資料が予想以上に多いことが明らかとなり、データの収集自体は進んでおり、これに基づく論考も執筆できたことから、研究計画は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き収集した民族誌的・歴史的史料を整理・分析し、研究目的に応じた成果を国内外の学術雑誌で発信してゆくことを目指す。史資料の量が予想以上に多く、その種類も多岐にわたるため、国内外の文書館で得られるデータと、現地調査でしか得られない資料を判別し、それに応じて研究・調査計画を練り直すことが必要となる。具体的には、アフリカやオーストラリアで予定していた現地調査を中止し、その分を英国の文書館における史資料の収集と分析にあてるなどして、より研究目的に応じた成果を出せるよう工夫してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用額が変更となった理由は、当初予定していたアフリカやオーストラリアでの国外調査を行うことができなかったからである。国内で収集できる民族誌的・歴史的史料が予想以上に多く、その整理・分析のために国外出張の時間がとれなかったことがその理由である。次年度は、これまでの文献調査で明らかとなった史資料の量、種類、分布を総合的に判断し、請求した助成金に基づき英国の文書館調査を行う予定である。
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