上杉慎吉に関する史料、またはその関連資料の収集を行なった。ハイデルベルク大学文書館では、上杉慎吉および穂積八束に関する史料を入手することができた。これらについて、引き続き分析を進めていく。 上杉慎吉の史料集活動に関する中間的な成果報告として、坂井大輔「上杉慎吉の国家論は「宗教」的か」(『法と文化の制度史』4号、2023年)を執筆した。2018年以降の上杉慎吉研究を踏まえた上で、改めて師である穂積八束との関係を問い直した論考である。この中で、飯田市立図書館において収集した史料の一部(飯田市立図書館森本資料中の「下伊那国民精神作興会収支予算決算及収入内訳」他)を活用している。 この論文と相前後して刊行された今野元『上杉愼吉 国家は最高の道徳なり』(ミネルヴァ書房、2023年)については、論文中で参照することは叶わなかったものの、書評報告を行なう機会を得た。これに基づいて、次年度に書評を執筆する予定である。 この論文では、穂積八束亡き後の上杉愼吉についてのみ検討したが、師のもとで研鑽を積んでいた時期の上杉についても検討すべきであることは勿論である。この点については、次年度に公表の機会を持ちたい。 次年度以降も、史料の収集および成果の公表を進めていく予定である。ハイデルベルクでの調査が成功裏に終わったたため、次年度はベルリン留学時代の上杉愼吉・穂積八束の足跡を辿ってみたい。今年度と同じく、学籍簿の発掘などを試みたい。
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