研究課題/領域番号 |
23K12354
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永石 尚也 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (20782923)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脱中心化 / 執行統制 / 専門家統制 / リスク / EBPM |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グローバル化する政策実現過程・行政過程の正統性確保にかかる研究蓄積を下敷に、ブロックチェーン技術を基盤とした脱中心化・分散化の諸技術及び官民を横断するその応用例への正統性確保のための原理を探求することにある。 初年度に当たる2023年度の本研究を取り巻く状況として、各種のAI技術が具体的ユースケースの拡大とともに「民主化」し、それに対する倫理的アライメント(及びAI技術によるAIアライメント(e.g. super-alignment))の議論も短期・長期を問わず拡充されてきたことがあげられる。AIを活用した政策形成やAI科学等を筆頭に「専門知」の新たな利用形態とその統制手法が広く論じられる中、こうした動向も反映し、本研究のスコープを当初より拡充し、「AIアライメントと専門知への信頼」という問題群との関係の下で、文献サーベイ及びケース分析を実施することとなった。 具体的には、各種デジタルプラットフォーマー規制、AI規制と脱中心化・分散化の諸技術への規制のトピックを横断する形で、研究課題(1)行政国家と私的主体との「協働」状況における脱中心化・分散化の諸技術の位置付け及び(2)脱中心化・分散化の諸技術のネットワークに対する統制手法・統制プロセスの位置付けに関する調査・分析を行なった。これにより、本研究の当初の課題である官民を横断するその応用例(DLT,NFT,DAO等)の実践的な担い手についての分析を、現下の状況に即して拡充するとともに、その規制文脈上の位置付けを明らかにする理論的基礎を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前記の通り、各種デジタルプラットフォーマー規制、AI規制と脱中心化・分散化の諸技術への規制のトピックを横断する形で、研究課題(1)行政国家と私的主体との「協働」状況における脱中心化・分散化の諸技術の位置付け及び(2)脱中心化・分散化の諸技術のネットワークに対する統制手法・統制プロセスの位置付けに関する調査・分析を行なった。これにより、本研究の当初の課題である官民を横断するその応用例(DLT,NFT,DAO等)の実践的な担い手についての分析を、現下の状況に即して拡充するとともに、その規制文脈上の位置付けを明らかにする理論的基礎を構築した。この点から、研究計画全体の推進のための基盤を遅延なく得ているものと考える。 具体的には2023年度の研究報告・論文として、映像情報メディア学会における生成AIの法的・倫理的課題をめぐる報告、日本法哲学会における専門家統制についての報告(論文化が決定している)、プラットフォーム規制との関連におけるオンラインヘイトスピーチ規制についての論文・書籍化などを各種実施し、本研究課題を取り巻く状況に即した課題へと着実に取り組んできた。 他方で、研究をとりまく状況に即し、本研究課題の持つ学術的インパクト・社会的インパクトをより拡充するための取り組みにも従事している点は、上述の通りである。この点は、研究の意義を当初の予定に比してなお拡大させるものとして評価されうるものと考える。この研究対象の理論的・実践的な広がりを基礎とし、「AIアライメントと専門知への信頼」という問題群との関係の下で、文献サーベイ及びケース分析を実施しており、次年度においては報告・論文化を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
現状までの進捗が上記の通り概ね順調に推移していることから、特段の課題は存在しない。 他方、研究課題(3)分散型ブロックチェーンを担う脱中心化・分散化の主体・作用への「法」的正統性付与の諸相については、2023年度においては中心的に取り組みの対象としていないことから、2024年度においてはこの点について集中して取り組む予定である。 以上を踏まえ、最終年度における公開のセミナー・シンポジウムの組成やその書籍化など、研究課題についての学際的・横断的な取り組むを促進させるための研究活動に広く従事することを想定しており、2024年度はその準備期間として、(すでに予定されている国際報告をも含め)国内外における研究交流にも一層の力を入れることとする。
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