研究課題/領域番号 |
23K12414
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
平井 新 東海大学, 政治経済学部, 特任講師 (90837296)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 越境 / 社会運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本と台湾で活動した「台湾の政治犯を救う会」を中心的事例として取り上げ、東アジアの民主主義の歴史と日台の社会運動の連帯の解明を目的としている。初年度は、資料の収集と研究環境の整備に加え、海外学会報告を中心に進められた。まず、研究活動を効率的に進めるために必要な機器を整備し、収集した資料の電子化などを行った。また、海外の学会に参加し、関連する日台の社会運動の連帯の多層性に関する研究成果を発表することで国際的な視点からのフィードバックを得る機会を設けた。
まず、①2023年6月に韓国大邱で開催されたアジア研究学会(Association for Asian Studies, AAS)のアジア大会に参加し、Transnational Memories of Grassroots Citizen Movements in East Asia: The Case of the Association to Save Taiwanese Political Prisonersというタイトルのペーパーを報告した。さらに、白色テロの被害者で、救う会の関係者も後年関心を寄せていた台湾籍老兵の一人である許昭栄のメモリーアクティビズムについて再検討した結果について、②2024年3月にアメリカ・シアトルで行われたアジア研究学会年次大会に参加し、Tracing the Localization of Multilayered Transitional Justice: A Case Study of Xu Zhao-Rong and Taiwanese Veterans in Modern Taiwan Societyというペーパーを報告した。
上記二つの論文から得られた知見として、越境するアクティヴィストの存在が左右や統一・独立というイデオロギーを越えた運動の結節点を形成したという点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた海外報告などは順調に行っているものの、当初より遅れている原因として以下の数点の理由が挙げられる。
①すでに予定していた海外での論文報告を行うための渡航費用等が昨今の為替相場が大幅に円安に振れた影響で予想を超えてかかってしまったため、台湾現地での調査を敢行できなかった。②インタビューを予定していた台湾の元政治受難者のキーパーソンが急逝してしまったため、再度インタビュー対象者の選定を行うことになった、③「救う会」元メンバーのインタビューについて別途資料集が刊行予定となり、刊行の前段階で関連資料へのアクセスが困難となったこと、など。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、台湾での現地調査・資料収集などを行って「救う会」の台湾における人的ネットワークについての解明につとめるほか、引き続き、戦後台湾の長期戒厳体制期に白色テロの被害に遭いながら日台やその他の地域で国境を超えて民主主義や人権を訴えて活躍した台湾人アクテヴィストの政治史に焦点を当てて解明することを目指す。具体的には、党外雑誌や新聞記事、当時のその他の関連する刊行物などを含めた一次資料、二次資料を手がかりに、台湾政治犯の救援活動を中心にそのほかのイシュー(例えば台湾人日本兵の戦後補償運動など)も含めた草の根市民運動のネットワークの広がりについて検討し、海外学会での研究報告の機会を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究計画の遂行において消耗品の物品の購入の計画をしていたものの年度予算申請の締め切り期日を取り違えて執行できなかったため結果的に数千円の誤差が出てしまった。今年度はこのようなことのないように余裕を持って執行の申請を行う。
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