研究課題/領域番号 |
23K12421
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
白取 耕一郎 大谷大学, 社会学部, 講師 (90909946)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 協働 / 市民参加 / 子育て支援 / 行政 / 官民関係 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、協働的取組の発展プロセスを分析するために「参加のはしご」を修正した「参加の格子」モデルを提示し、協働による子育て支援と高い合計特殊出生率で知られる岡山県奈義町を中心とする日本の協働的取組の事例をそのモデルに基づいて実際に調査・分析して、協働的取組が長期的に発展するメカニズムを明らかにすることである。初年度である2023年度は、「参加の格子」モデルを構築し、奈義町の事例研究を行うことを計画していた。 奈義町の調査については、ほぼ計画通りに実施することができた。史料を用いて歴史的分析をさらに深めたほか、現地において関係者への半構造化インタビューを10件実施した。現在注目を浴びている奈義町の取り組みが、歴史的に子どもを大切にする文化や活動の基礎の上に築かれているという仮説を得た。また、心理学的な指標の測定も行い、町民がどのように協働による子育て支援についての自信を深めていくかというプロセスについても考察した。 神奈川県鎌倉市におけるリビングラボの研究では、アクションリサーチとして実際に運営に携わりながら、シニアを中心とする地域住民によるスマホの使い方の教え合いを通じてデジタルデバイドを解消する研究を行った。 奈義町での研究結果は、国内での研究会(行政共同研究会)、国際学会(Asian Association for Public Administration)で報告した。特に国際学会においては、報告後に各国の参加者から個別に質問を受けるなど、一定の反響があった。 また、日本における協働と市民参加の理論的背景について論文を執筆し、学術誌(哲學論集)に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までのところ、ほぼ計画通りに研究が進んでいる。奈義町における調査は原則として完了した。インタビューの件数は当初予定よりやや減少したが、これは関係者との調整によって現状で必要十分と判断したためであり、必ずしもネガティブなものではない。分析も進んでおり、文字化もできている。学会報告などでも有用なフィードバックが得られている。並行して研究を進めている鎌倉市の事例も含め、研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、2023年度の研究成果の①発表と②展開の段階に移る。①発表としては、2024年6月の韓国行政学会に日本行政学会から派遣されることになっているため、まずそこでのフィードバックを得てから、国際学術誌への投稿に向けて作業を進める計画である。②展開については、奈義町の調査結果から得られた理論枠組を他の事例に適用したときにどのような結果が得られるのかを確かめることを想定している。鎌倉市の事例はその1つの候補として考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年4月に大谷大学に転職したため、岡山県奈義町や神奈川県鎌倉市に調査に行く交通費・宿泊費が大幅に変わった。それに伴い、可能な限り1回の調査でインタビュー調査を多数行えるように計画を変更した。ただし、想定より研究の質が低下したような事態は発生していない。 当初より複数の事例研究を行う研究計画であったため、次年度使用額でそれらの調査を充実させることを計画している。
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