研究課題/領域番号 |
23K12429
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇治 梓紗 京都大学, 法学研究科, 准教授 (00829591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | プラスチック政策 / 国際環境条約 / サーベイ実験 |
研究実績の概要 |
本研究課題の研究期間の1年目であるため、国際雑誌に掲載という具体的な成果はまだ上がっていないが、研究は順調に進行している。主に今年度の研究成果は3点挙げられる。(1)アジア諸国でプラスチック政策の一つとして注目が集まるプラスチック廃棄物発電をめぐる民意を探るため、サーベイ実験をタイで実施した。現在、計量モデルを用いてサーベイ実験によって得られたデータを分析している段階であり、その結果は2024年9月に開催されるアメリカ政治学会で報告する予定である。(2)世界各国の使い捨てプラスチック規制の程度のばらつきが何によって説明されるかを明らかにするため、独自に作成したデータセットを用いて量的に分析した研究は、現在国際雑誌によりレビューされている段階である。(3)また、2024年4月に開催されたプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第4回政府間交渉委員会に参加し、国際プラスチック協調をめぐる争点や国家間の対立軸について情報収集を行った。これらの研究は、プラスチック規制をめぐる各国の政治・経済的文脈をベースとして、国家利益の観点から国際プラスチック協調をめぐる交渉過程を理解するとともに、協調のあり方をめぐり政策的含意を提示するものとなっている。 なお、本研究課題と関連する形で以前から手がけてきたエネルギー政策をめぐるサーベイ実験研究が国際雑誌PLOS Climateから刊行された。本研究は、アメリカにおいて、安全保障政策とエネルギー政策をめぐるトレードオフをめぐる民意と党派との関係を、サーベイ実験を用いて明らかにするものである。また、複数のイシューをめぐる国際制度交渉過程を理論的に実証分析した書籍のブックレビューが国際雑誌 International Relations of the Asia-Pacificから刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
産前・産後休暇を経たために海外渡航ができず2023年度に開催されたプラスチック条約交渉への参加が叶わなかったが、2024年度中の2回にわたる条約交渉参加によって本研究のための情報収集は十分に補完可能である。なお、アジア諸国のプラスチック政策をめぐるサーベイ実験研究については、申請書に記載した計画以上のペースで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
タイにおけるプラスチック廃棄物政策をめぐるサーベイ実験研究、使い捨てプラスチック規制の規定要因を探る研究は、2024年度内に国際雑誌から刊行することを目指す。プラスチック汚染に関する条約の最終交渉となる2024年11月開催の第5回政府間交渉委員会に引き続き参加し情報収集を行う予定である。なお、2024年度中に2回のプラスチック条約交渉が開催されることは研究計画作成時には予測できなかったという事情から、2023年度に執行予定であった予算の一部を2024年度に繰り越した。
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次年度使用額が生じた理由 |
妊娠および出産により、当初2023年度に予定していた海外渡航を伴う条約交渉への参加が叶わなかったために次年度使用額が生じた。この繰越予算は、2024年度に引き続き開催される2回の条約交渉に参加するための渡航費用に充てる。
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