研究課題/領域番号 |
23K12474
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
大浦 あすか 大東文化大学, 経済学部, 講師 (10784019)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | イノベーション / 一般均衡 / 情報の非対称性 / 経済厚生 / 参入規制 |
研究実績の概要 |
「短期間で市場から退出する企業」の影響を考慮した上で、イノベーションを促進し社会厚生を最大にするための、参入規制政策や品質規制政策と、産業の特徴(限界費用、R&D費用、外部性の程度など)の関係を明らかにするために以下の研究に注力した。 論文``Deregulation: Why We Should Sometimes Welcome Even Low-Quality Firms''では、(i)新規企業の生産した財の品質は直ちに買い手には伝わらない、(ii)質の悪い企業は、財が直接的に消費者に与える効果だけではなく、資源配分をも通じて社会厚生に影響を与える、の2点を同時に考慮し、 海外との取引を考慮しない閉鎖経済において、参入規制の度合い、外部性の程度、研究開発費の大きさによって、質の悪い企業の参入割合を特徴付け、社会厚生を最大にする参入規制政策の性質を分析した。分析の結果、次のことが明らかになった。 1. 競争市場均衡では、参入の固定費用が研究開発費用に比べて相対的に高い場合、高品質な企業のみが市場に参入し、効率性が確保される。参入の固定費用が低い場合には、低品質な企業が参入するため、競争市場均衡は非効率となる。 2. 低品質の財を生産する企業が参入する近郊において、参入規制を実施すると、低品質企業を排除するかもしれないが、それにより、市場競争力が低下し、賃金が上昇するため、経済厚生が低下する。 3. 財の生産や消費において、環境汚染などの負の外部性が伴う場合は参入規制は経済厚生を改善する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉鎖経済モデルについての分析をまとめた論文を国際学会で報告し、コメントに基づいて論文を修正し、国際雑誌に投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 23年度に構築した理論モデルを拡張し、新規企業による新しい財を生み出すイノベーションに加え、既存企業も品質改善のイノベーションを行う状況を想定したモデルを構築する。 2. 閉鎖経済モデルを2国モデルに拡張し、各国の産業政策がそれぞれの国の経済厚生に与える影響を分析するためのサーベイを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を計画していた国際学会1件について、日程が合わず参加できなかった。また、複雑な計算を想定してソフトウェアを購入する予定だったが、その必要がなく計算を終わらせることができた。次年度はその分を国際旅費とソフトウェアの購入に充てる予定である。
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