研究課題/領域番号 |
23K12483
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
永島 史弥 近畿大学, 経済学部, 准教授 (50845956)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | サプライチェーン / 脱炭素社会 / 産業連関分析 / トランジション / ネットワーク分析 |
研究実績の概要 |
今年度はグローバル多地域産業連関表(GMRIO)にネットワーク分析で用いられる媒介中心性のアイデアを適応し、日本の特定の産業が関与するグローバルサプライチェーンからの排出量を推計した。本研究で推計される排出量は、生産基準排出量や消費基準排出量といった既存の排出勘定では過小評価されていた中間財産業のグローバルサプライチェーン上での排出への寄与を明らかにするものである。推計するに当たり、コロナ禍や各国の対立といった近年の情勢を踏まえた時系列変化を分析に取り入れるため、2000年から2022年までの実質価格表を提供しているアジア開発銀行の産業連関表(ADB-MRIO)を用いることになった。ADB-MRIOは排出勘定を提供していないため、国際エネルギー機関が提供しているGHG排出量データを用いて、ADB-MRIOの産業分類に対応した排出勘定データを作成した。 また、求めた排出量がどのような要因で変化してきたのかを明らかにするために、DSA型要因分解をに基づいた構造分解分析を行った。本手法を用いたこれまでの分析では、産業構造の変化をレオンチェフ乗数の変化として見られてきたが、本研究ではこれをサプライチェーンの川上構造の変化・川下構造の変化に分解した。本手法を適応する際には変数間の依存性の問題にも対処している。本研究業績は次年度の国際産業連関分析学会で発表予定であり、更に査読付英文誌への投稿に向けて論文に取りまとめている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分析の過程で、データの整備に多くの時間を割いてしまったため、目標としていた査読付英文誌への投稿まで至らなかった。次年度中には受理されるよう引き続き準備を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、既に推計した排出量のうち、当該産業が川上・川中・川下のどこに位置するときのサプライチェーンからの排出量が多いのかということを明らかにし、その割合によって各国・各産業のグローバルサプライチェーンにおける相対的な位置を特定する。また、今年度整備した時系列のGMRIOおよび排出勘定データを用いて、各産業のサプライチェーン排出量とその構造的な位置がどのように変化したのかを定量的に分析し、その要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れから、当初予定していた学会参加や研究打ち合わせの機会が減り、また英文校正スケジュール等にも影響があったため。次年度は早期に論文を完成させ、英文校正や論文発表の機会に繰越金を使用したい。
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