商品コンセプトが曖昧なままデザインを活用しても,消費者視点では似たような商品で溢れ,強固なブランドには成長しない。コンセプトの重要性は古くから認識されているにもかかわらず,その評価・適用方法に関する既存研究は乏しい。そこで,本研究では,コンセプトの顧客経験への適用に焦点を置く。1つ目は,広告である。日本企業はコンセプトが曖昧なために著名人に依存する傾向があるが,優れた企業は著名人に過度に依存せずに一貫してコンセプトを訴求し続けている 。2つ目は,購入経験である。販売のオンライン化が進む中,多くの企業がAmazonに代表される第三者ECサイトに依存している。一方で,優れた企業はコンセプトに沿わない低品質な購入経験を避け,独自ECサイトを重視している。このように,著名人や第三者ECサイトによる短期的な売上志向は,長期視点では高コストかつロイヤルティの低下を招く恐れがある。しかし,この懸念を実証した例は少ない。そこで,2023年度は日本市場を中心として,上記2つの効果を実証した。 1つ目は,日本におけるパーソナルコンピュータとスマートフォンに焦点を当て,消費者の製品利用シーンについて考察した。つまりモデルが日常生活と同じように製品を使用しているという消費者の信念が、購入意欲にどのようにプラスの影響を与えることを示した。有名人であるかにかかわらず,コンセプトに基づいてマーケティングコミュニケーションのモデルを決定することの重要性を示唆している。 2つ目は,AppleのMacBookを被験者とし、サードパーティECとAppleのブランドECの製品情報ページを用いてランダム化比較試験を実施した。 その結果,消費者は他社 EC よりもブランド EC の情報を見たほうが魅力を感じる可能性が高いことが示された。メーカーブランドが管理できるチャネルを通じて,一貫してコンセプトを体現すべきである。
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