研究課題/領域番号 |
23K12683
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
齋藤 公美子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (30965041)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 米粉パン / 高温水添加製パン法 / 老化抑制 / 玄米粉 / 粒度 |
研究実績の概要 |
本年度は、米粉内在性酵素および高温水添加が米粉パンの老化に及ぼす影響について検討した。その結果、米粉の内在性酵素として、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、α-グルコシダーゼの活性が確認され、外因性酵素添加試験においても高温水添加と酵素添加のそれぞれで米粉パンの老化抑制効果が確認された。また、高温水添加と酵素添加を同時に行ったパンは、高温水添加のみのパンや酵素添加のみのパンよりも老化抑制効果が大きかったことから、高温水と酵素の相乗効果により、より強い老化抑制効果を得られることが示唆された。パンクラム中のデンプン分子量の推定では、加水温度が高くなるほど、より高分子のデンプンの分解が認められた。以上の結果より、米粉パン調製時に高温水を添加することで一部糊化したデンプンを、パン生地の発酵および焼成中に米粉内在性酵素が分解し、デンプンの再結晶化が抑制されることによって、米粉パンの老化が抑制されたと考えられる。 次に、高温水添加製パン法を確立するために白米粉以外のGF穀物粉を用いて製パンを行った。本年度は玄米粉を着目し、玄米粉の粒度の違いが、GF玄米粉パンの製パン性に与える影響について検討した。玄米粉は、令和4年に収穫された山形県産雪若丸を湿式気流粉砕法により製粉し、粒度の異なる5条件の米粉を使用した。その結果、玄米粉の粒度が大きくなるにつれて、比容積は有意に大きくなった。一方でパンの硬さは、玄米粉の粒度が小さくなるにつれて有意に増加した。また粒度が大きくなるにつれてクラムとクラストの明度が下がる傾向が見られた。生地のレオロジー特性は、玄米粉の粒度が小さいと粘弾性が上昇する傾向が見られた。これらのことから、玄米粉パンの調製において、玄米粉の粒度の違いがパン生地の粘弾性を変化させ、玄米粉パンの製パン性に影響を与えることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は「高温水添加製パン法における老化抑制のメカニズムの解明」および「グルテンフリー玄米粉パン調製に対する玄米粉の粒度の影響」の2つの研究課題について取り組み、それぞれ学会発表を行った。現在はこれらの研究課題に関する論文を執筆中であり、次なる課題についても着手している。
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今後の研究の推進方策 |
「高温水添加製パン法」において、白米および玄米を用いたGFパンの製パン性を向上させることが明らかになった。しかし、これらの検討に用いた米粉は、それぞれ米の品種や粉体特性が異なっていたため、米粉パンの品質に大きな影響を及ぼすのが精白の影響なのか高温水の影響なのかどうかは不明であった。そこで、次年度は、同品種、同程度の粉体手特性を有する白米粉および玄米粉を用いて、米の精白および加水温度が製パン性に及ぼす影響を明らかにする。具体的には、粉体特性を揃えた白米粉、玄米粉を供試材料とし、5℃の冷水および高温水を添加してパンを調製し、比較検討を行う。焼成パンを用いて製パン性評価(比容積測定、断面観察、テクスチャー測定、色差測定、官能評価)を、生地を用いて物理化学的特性解析(糊化度測定、動的粘弾性測定)を行う。 さらに、これらの精白の有無がGFパンの老化抑制に及ぼす影響についても検討するため、5℃の冷水および高温水を添加し、白米粉パンおよび玄米粉パンを調製し、保存時間の異なるパンについて、老化特性評価(糊化度測定、テクスチャー測定、水分含量測定、官能評価)を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用額の差額が生じた主な項目としては、物品費と旅費であった。本年度購入した「レーザー体積計AR-01」は予定よりも安く購入できたことから、物品費に差額が生じた。旅費については大学の教員教育研究経費および学内の研究支援に関する助成金を獲得できたため、こちらを活用したことで、差額が生じた。次年度は実験消耗品、論文投稿費用に活用するほか、積極的な学会参加、市場調査などの旅費などに当てたい。
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