研究課題/領域番号 |
23K12684
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
生内 和哉 (福原和哉) 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (70881514)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 伝統野菜 / 生薬 / キク / チョロギ / フキ / ホウキギ / 抗炎症 / リパーゼ阻害 |
研究実績の概要 |
秋田県で60年以上栽培されている「あきた伝統野菜」の中には、生薬としての利用実績もある野菜 (キク・セリ・チョロギ・フキ・ホウキギ) も存在するが、それらの健康機能はほとんど検証されていない。そこで本研究では、それら野菜の可食部および未利用部位の健康機能と、健康機能をもたらす活性成分を明らかにすることを目指す。本年度は、湯沢ぎく (花・葉・根)・チョロギ (地下茎・葉)・秋田ふきおよび阿仁ふき (葉柄・葉・地下茎)・ホウキギ (種子) の抽出物を調製し、抽出物の抗炎症活性および抗肥満活性 (リパーゼ阻害活性) の有無を検証した。なお、抗炎症活性はRAW264.7マウスマクロファージ細胞の炎症反応におけるNO生産量をGriess法で定量することにより検証し、リパーゼ阻害活性はリパーゼにより分解されると蛍光を発する基質とブタ膵リパーゼを用いた酵素試験により検証した。 ・湯沢ぎくの花 (可食部) および葉において抗炎症活性が見られた。 ・チョロギの地下茎 (可食部) においてリパーゼ阻害活性が見られた。この活性成分を特定すべく、抽出物をHP-20を使用したカラムクロマトグラフィーにより分画し、活性成分の濃縮を行なった。また、葉の抽出物には強力な抗酸化活性があることが示唆された。 ・秋田ふきおよび阿仁ふきの葉柄 (可食部) および葉において、抗炎症活性が見られた。比較用に直売所で購入した野生とみられるフキ (2種) では同じ濃度でも活性は見られず、伝統野菜特有の活性成分の存在が示唆された。 ・ホウキギ種子の抽出物は、マクロファージ細胞に対して比較的強力な細胞毒性 (100 ug/mLにおいて生存率50%未満) を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように、多くの伝統野菜およびそれらの未利用部位で健康機能に関連すると見られる活性を確認でき、研究に一定の進展は見られた。一方で、特に植物の葉を対象としたリパーゼ阻害活性試験において、植物に豊富に含まれる油脂や脂溶性色素が原因とみられる偽陽性が多く見られた。また、この結果を踏まえ、ODSカラムに大きな負荷がかかることを想定して、LC-MSを用いたメタボローム解析を一旦見送った。このような状況を鑑みて、当初の想定よりもやや遅れていると判断した。現在、脱脂を行ないつつ効率的にスクリーニング用サンプルを調製する方法を試みており、本年度は当初の計画通りの進展を見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の成果および進捗状況を踏まえつつ、より研究を発展させるために、今後は以下のように研究を進める。 ・すべての伝統野菜サンプルにおいて、脱脂を行なった抽出物サンプルのリパーゼ阻害活性試験を改めて実施する。 ・湯沢ぎくについて、成分および抗炎症活性を他の食用ギク品種と比較する。現在、秋田県・山形県・新潟県で収集された、色や見た目が異なるキク15品種の花および葉のサンプルを入手しており、抽出サンプルの調製を進めている。 ・チョロギに含まれるリパーゼ阻害成分の単離精製と同定を目指す。また、葉のDPPHラジカル消去能を測定し、抗酸化活性についても検証する。 ・日本の代表的な栽培フキである愛知早生ふきと、秋田ふきの近縁品種と考えられる北海道のラワンブキを入手し、秋田ふき・阿仁ふきと成分および抗炎症活性を比較する。 ・ホウキギ種子の細胞毒性物質の同定を目指すとともに、細胞毒性物質を除いた状態での健康機能性を検証する。また、加工品 (とんぶり) を入手し、成分および活性を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分取精製用カラムをキャンペーン価格で購入でき、また、ほとんどの植物サンプルを購入ではなく譲渡という形で入手できたため、研究費に余裕ができた。本年度は研究計画の変更はしないが、NMRおよびLC-MSのデータを解析するためのパソコンを購入する予定である。
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