研究課題/領域番号 |
23K12691
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
郡山 貴子 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (20825369)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 豆 / 貯蔵 / 焙煎 / 調理 / 抗酸化 |
研究実績の概要 |
豆類は保存性が高く,栄養素が豊富で食物繊維や様々な機能性成分を含有する優れた食品である。しかし,高温高湿で長期間保存した豆はいくら加熱調理しても軟らかくならないことから“硬化”または“Hard-to-Cook(HTC) bean”と呼ばれ,多くは利用されずに廃棄されてしまう。豆の貯蔵に低温が適していることは知られているものの,すでに硬化した豆については有効的な活用方法が確立しておらず,食品ロスの観点から国内外で大きな問題となっている。豆類はわが国において食文化および伝統的な調理・加工品において欠かせない食材であり,これらの問題を解決するために本研究では貯蔵後の需要の低下した豆に新たな価値を付与し,食品素材として用途を確立することを目的とした。申請者のこれまでの研究により,硬化した貯蔵豆はそのままでは食材としての利用価値が低下しているが,煮熟以外の調理・加工方法を施すことで嗜好性や機能性の改善が見込めることが示唆された。 本研究における初年度の研究成果としては,種々の豆について,貯蔵の影響によって機能性(ポリフェノール含量,抗酸化活性,ACE阻害活性など)が変動することを明らかにした。また,これらの機能性の変動は豆の種類によって増加する場合と減少する場合があることもわかった。さらに,貯蔵豆を焙煎処理し,抗酸化活性や生理機能性を向上させるための最適な焙煎条件を探るため,焙煎条件の違いが機能性へどのような影響を及ぼすのか測定を行い評価しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画としては,種々の豆における機能性の変動に及ぼす貯蔵の影響を明らかにすることであった。したがって,現在まで計画通りに進捗しており,得られた成果は学会および論文にて発表している。
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今後の研究の推進方策 |
①貯蔵前の機能性向上に及ぼす焙煎処理の効果について明らかにする。 1年目の結果より,同じ豆であっても貯蔵前後では抗酸化活性や機能性成分が異なることや,豆の種類によって貯蔵前後における機能性の変動傾向も異なることが明らかになったことから,焙煎処理による影響の受け方も豆の種類や状態によって多様であると予測される。そこで,貯蔵豆の抗酸化活性および生理機能性を向上させるための最適焙煎条件を探る。焙煎温度は150℃~210℃とする。焙煎後は1年目と同様にポリフェノール含量,抗酸化活性,ACE阻害活性,およびレジスタントスターチの測定を行う。 ②貯蔵豆を用いた調理品の調製および嗜好評価を行う。 貯蔵豆を用いた調理品を作製し,機能性分析だけでなく,食べてみて美味しいかどうかといった好ましさについても官能評価を行う。調理品の嗜好性に関わる機器測定による分析については,呈味成分についてはHPLCや味覚センサー,色価の変化は色差計,物性測定はテクスチャーアナライザーなどを用いて分析する。人による嗜好性の評価では,色などの外観,味や香り,物性(固体の場合にはかたさ,付着性,凝集性,粒子感,液体の場合には粘性,口当たりなど)の官能検査を行う。得られた結果は機器測定の結果と対応させ考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本務校のキャンパス移設が2023年度~2024年度にかけてあり,引っ越し業務が長期にわたって実施されていたため,一部の機器類などの購入を控えており2023年度の使用額が小さくなった。
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