研究課題/領域番号 |
23K12693
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
下島 優香子 東洋大学, 食環境科学部, 准教授 (60776029)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | Listeria monocytogenes / Listeria spp. / 含浸液 / 衛生指標菌 / HACCP |
研究実績の概要 |
2023年度はスポンジの含浸液として、生理食塩水を使用する場合と中和バッファーを使用する場合でリステリアの検出を比較した。検査した汚染区域の10か所のうち、含浸液が生理食塩水の場合はL. monocytogenesは6か所、Listeria属菌は8か所が、中和バッファーの場合は L. monocytogenesは8か所、Listeria属菌は10か所全部が陽性となった。アルカリ洗剤で洗浄した清浄区域の床および中性洗剤で洗浄した後炭酸次亜塩素酸水を適用した床で差が認められた。含浸液を生理食塩水でふき取り後にBPWを加えた場合は、リステリア属菌の陽性数は変わらなかったが、L. monocytogenesは1検体多く陽性となった。 相模原市の協力を得て、惣菜製造施設においてリステリア環境モニタリングを行った。衛生指標菌の検査および含浸液の比較も行った。L. monocytogenesおよびListeria spp.が分離されたのはいずれも食品が接触しない床や台車車輪等であった。含浸液ごとの検出数は、L. monocytogenesは生理食塩水では1検体、中和バッファーでは4検体、ワイドスペクトラム中和バッファーでは3検体、Listeria spp.は生理食塩水では2検体、中和バッファーでは4検体、ワイドスペクトラム中和バッファーでは5検体であった。中和機能のある含浸液のほうが検出数が多く、リステリアを対象とする拭取り検査に望ましい可能性が示唆された。 一般生菌数(含浸液生食)は1.8-6.5 log cfu/gであり、含浸液による有意差はなかった。腸内細菌科は<1-4.0 log cfu/gであり、検出限界を超えた検体数はいずれの含浸液も同等であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
惣菜を製造する食品工場環境におけるリステリアおよび衛生指標菌の検査を行い、汚染の状況を調べることができた。ふき取り資材を湿らせる含浸液は、日本では生理食塩水やリン酸緩衝生理食塩水が主流であるが、海外では環境に残存する消毒薬を中和し、損傷菌の発育を支持する緩衝液で湿らせることが推奨されている。本年度はふき取り資材を湿らせる含浸液の比較を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
食品製造環境から分離されたListeria monocytogenes菌株の薬剤感受性や消毒薬耐性を調査する。また、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国際学会が延期になった。次年度開催予定であり、参加する予定である。 所属の移籍があり、年度当初に実験を行うことが困難であった。 所属の移転があり、年度末に実験を行うことが困難であった。 次年度は食品製造環境から分離されたListeria monocytogenes菌株の次世代シーケンサーによる解析を行い、製造環境に定着する株の特性を解析する計画である。次世代シーケンサー解析に必要な試薬や解析用コンピュータやソフトが高価であり、研究費を多く使用すると思われる。
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