研究課題/領域番号 |
23K12851
|
研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
黒澤 寿美 聖徳大学, 教育学部, 教授 (60650611)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 数学的な見方・考え方 / 和算 / プログラミング的思考 |
研究実績の概要 |
1年次の研究目的は、和算に関する文献の収集と現地調査であった。多くの和算関連の資料がある岩手県(一関博物館と一関市内の神社)と愛知県(安城市歴史博物館と愛知県内の神社)を実際に訪れて、所蔵文献の複写を行った。 収集した資料のうち、『塵劫記』以降の和算書を中心に、江戸時代に算数遊戯と言われたパズル的な問題を選び出し、教材化のための基礎資料を作成した。現地調査や文献収集する中で、江戸時代に子どもや算数初学者に向けて書かれた「算法童子歌車」と、「絵本工夫之錦」に着目し、それらの文献で提示されている問題の解法について、江戸時代の解法と現代の算数で扱われる解法を比較し分析を行った。その結果、江戸時代の解法は、答えを求めるために試行錯誤的に考えるところから論理的な思考へ移る場面が、学習者に意識しやすいことが示唆された。これを受けて、実際に小学生に授業を行うための問題を選定する作業を行った。現行教科書にも鶴亀算や旅人算などの和算の問題は取り上げられている。しかし、これらの問題は四則演算の文章題として、図や式に表しながら解決するタイプの問題であるため、算数を苦手とする児童には、興味を持って取り組むのが難しい場合もある。そこで、本研究では、魔法陣やさっさ立てのようなパズル的な問題に焦点をあてて問題を選定し、数学的な見方・考え方がより分かりやすく児童に伝わるように工夫した。 一方、プログラミング的思考と数学的な見方・考え方に共通する論理性については、過去の先行文献から、両者の共通点と相違点をまとめている段階にとどまっている。 なお、これらの結果は、滋賀県和算研究会で発表(2023.9.23)するとともに、聖徳大学教職実践センター年報に寄稿した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年次に計画していた文献調査及び現地調査は、ほぼ完了しているため
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、文献および現地調査で収集した和算の問題を分類し、文章題形式ではないパズル的問題の中で、小学校段階で扱えるものを選ぶ。選んだ問題についてどのような数学的な見方・考え方を育成できるかを整理し、それぞれの問題を対象学年に割り当て指導案を作成する。 その後、協力校にて教材化した問題を使って実際に授業を行う予定である。 授業では、児童の発言等を質的研究法により分析し、思考過程の特徴を明らかにしていく。 なお、これらの結果は、日本数学教育学会で発表を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
協力校との事前打ち合わせをオンラインで実施したため旅費に差額が生じた。今年度は、実際に授業実施へ向けて対面での打ち合わせが複数回必要となるため、その旅費として使用する予定である。
|