研究課題/領域番号 |
23K12873
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阿部 望 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 助教 (10909948)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 強み / ポジティブ心理学 / well-being / 小学生 / 学校 / 介入 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、児童生徒のwell-beingに対する有効性(効果)と有用性(受け入れやすさ)を兼ね備えた強み介入を開発することであった。まず有効性の向上については、介入の媒介変数として機能すると考えられる強みの認識と活用感に着目し、「日々の短時間の強みの活動の継続」によって、自身の強みを認識し活用する頻度を増やすとともに、(強みを他者からみつけてもらったり活用したりすることで)自身の強みの木の花が育つ「WEBアプリの導入」によって、自己の強みを視覚的にフィードバックすることで、従来よりも強み介入の効果を高めることを目指した。有用性については、事前に小学校教員にアンケートを行い、1~2回の授業と5分以内の日々のワークであれば、多忙な学校現場でも実施しやすいことが示唆されたため、本研究では、1~2回の強みの授業とWEBアプリを用いた日々の5分以内の強みのワークを組み合わせた介入プログラムを開発した。 今年度は、介入の希望があった中学3年生139名と小学4年生83名を対象に研究を行った。しかし、中学生では教育委員会のアプリへのアクセス許可設定がうまくいかず、日々のワークを実施することができなかったため、新たに開発した介入の効果検証を行うことはできなかった。小学生では、学校との協議の結果、4年生でも実施が容易な友達と強みをみつけあう活動を中心とした強み介入(授業1回+2ヶ月間の日々のワーク)を行った。混合効果モデルによる分析の結果、クラスの影響を統制してもなお、介入前後で強みの認識、強みの活用感、他者の強みへの注目の有意な向上が示され抑うつの有意な改善が示された。また多くの児童が、強みの取り組みは楽しかった(99%)、大変ではなかった(74%)と回答していた。以上の結果から、開発した強み介入は児童の抑うつの低減に効果的であり、児童に受け入れられやすい介入であったことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、中学生の介入は効果検証が困難となったが、小学生の介入は予定通り実施することができた。また、介入の結果、統制群を設けていないため介入以外の要因が結果に影響した可能性は否定できないものの、新たに開発した強み介入が抑うつの低減に効果的であり、児童からも受け入れられやすい介入であったことが示唆された。したがって、本研究課題の進歩状況はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、児童や教員から得られた意見を元にWEBアプリの改良を行う。そして、小学生を対象に、介入群と待機統制群を設定し、介入効果の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、WEBアプリの開発・修正費が予定よりも少なかったため、残金が生じた。残金については、2024年度のWEBアプリの修正や学会等での成果発表のための経費にあてる予定である。
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