研究課題/領域番号 |
23K12901
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
富田 望 東京学芸大学, 教育学部, 特任講師(Ⅰ種) (30823364)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 社交不安症 / 自己注目 / バーチャルリアリティ / 視線計測 / スピーチ課題 |
研究実績の概要 |
第1に、聴衆のいるスピーチ場面を再現したバーチャルリアリティ(VR)空間の中で自己注目の程度を定期的に評定するシステムを開発した。そして、自己注目の変動に合わせて、スキャンパス、注視回数、瞬目数が変動するのかを明らかにするための実験研究を行った。このVRシステムは、スピーチ評定者が映ったVRを視聴しながらスピーチ課題を6分間行い、30秒に1回の頻度で、どの程度自己注目をしていたかを呈示された画面に従って0―100で回答するプログラムになっている。また、スキャンパス、注視回数、瞬目数を計測できるVRゴーグルを用いて、VR視聴中の眼球情報と自己注目度の関連性を検討した。 現時点で収集した60個のデータについて途中経過の解析を行った結果、対象者の社交不安傾向に関わらず、スピーチ中に自己注目が高まるほどスキャンパスが短くなることが示された。また、社交不安傾向が高い者において、スピーチ中に自己注目が高まるほど注視回数が減ることが示された。一方、瞬目数については、自己注目の変動と有意な関連は示されなかった。以上より、スピーチ中におけるスキャンパスと注視回数を計測することで、社会的場面における自己注目状態をリアルタイムに推定できる可能性が考えられた。 第2に、研究2で使用する視線知覚課題について、自己注目との関連性を明らかにするために、大学生28名を対象に、視線知覚課題とスピーチ課題を実施し、スピーチ課題中における自己注目の程度を質問紙で測定した。相関分析の結果、視線知覚課題とスピーチ課題中の自己注目との間に有意な中程度の正の相関がみられ、視線知覚の幅 (自分が見られていると感じる他者の視野角)が広い者ほど、スピーチ中に自己注目が高まったことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中核に位置づけられる、「スピーチ場面を再現したバーチャルリアリティ(VR)空間の中で自己注目の程度を定期的に評定するシステム」の開発が完了し、データ収集を進めており、途中解析においても概ね仮説通りの結果が示されているため。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き研究1のデータ収集を進め、社会的場面における自己注目状態をリアルタイムに計測・推定するシステムを完成させる。さらに、研究2と研究3で使用する、VRを用いた自己注目低減プログラムの開発を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は実験に用いるVRのシステムを完成させ、実験を開始したが、次年度から本格的なデータ収集およびデータ解析を進める予定である。使用計画としては、実験参加者に対する謝金、データ収集やデータ解析の際に研究協力者を雇用する際の謝金、研究成果を学術雑誌に発表する際の論文掲載費などに予算を使用する予定である。
|