研究課題/領域番号 |
23K12918
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
高橋 あすみ 北星学園大学, 社会福祉学部, 講師 (80908666)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 喪失 / 有名人 / グリーフ / 自殺予防 / 報道 |
研究実績の概要 |
本研究は、メディアの問題と考えられてきた有名人の自殺報道を、人々の間に築かれるパラソーシャル関係(Parasocial Relationship: PSR)の喪失という視点で捉え直し、有名人の自殺報道後にできうるグリーフケアやポストベンションの実践につながる考察をおこなうことを目的としている。 初年度である2023年度は、人々と有名人のパラソーシャル関係を測定する尺度開発のための予備調査を実施した。具体的には、PSRを測定するために開発されたCelebrity-Persona Parasocial Interaction Scale(CPPI)の日本語版を作成し、その信頼性・妥当性を検証するため、調査会社のモニターに登録している18歳以上の成人300人を対象にweb調査を実施した。調査内容は、対象者が最も好きな有名人あるいはキャラクターと、日本で最も知名度の高いと考えられる有名人の2つの対象について、日本語版CPPIとファン心理を測定する既存の尺度に回答してもらうものであった。さらに、日本語版CPPIの再検査信頼性の検証のために、1か月後にも100名に追跡調査を行った。その上で、日本語版CPPIの因子構造を因子分析によって確認した。この研究成果は現在、論文投稿の準備中である。 また、有名人の自殺報道やグリーフに関する研究、「推し」研究について最新の文献を収集して文献調査を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)2023年度に所属先が変更となりそれに伴う業務内容の大幅な変化から、本研究に当初予定していたエフォートを割くことができず、調査開始までに時間を要した。 (2)CPPI尺度の妥当性検証のための調査計画の検討に、思いの外時間を要した。
なお、2023年度に実施予定であった本調査は実施準備が整っているため、次年度以降の研究は予定通りに実施できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に開発した日本語版CPPI尺度を用いて、コロナ禍に亡くなったことが報道された実際の有名人3名と人々が築いていたPSR、および死後に抱いた悲嘆反応や対処行動、その違いに関連する要因を明らかにするため、成人1000名を対象としたweb調査を実施する。その後、深刻な体験をしたと考えられる対象者にのみ協力を得て、体験過程や必要な支援に関するインタビュー調査を行う。また本書に関連した書籍を2025年に出版予定であり、現在も執筆中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実施予定だった大規模web調査を2024年度に実施することになったため、そのための費用が必要である。調査会社に委託して1000名を対象に項目数の多い負荷の高い調査を行うため、90万円を計上している。
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