研究実績の概要 |
2023年度は,まず関連する研究動向のレビューを行った。また,半構造化面接および質問紙調査によって,ひきこもりからの改善プロセスにおける認知行動療法的観点からみたひきこもり状態の「機能」と生活の質の役割を質的に記述した。ビデオ通話による半構造化面接においては,ひきこもり始めた前後,最もひきこもっていたときの前後,現在の3時点とその過程について,ひきこもり状態の背景や意味と心理行動的状態について聞き取った。また,質問紙調査においては,最もひきこもっていた時期および現在の2時点について回答を求めた。質問紙には,ひきこもり経験の有無やひきこもり期間,性別,年齢,外出頻度などに加えて,ひきこもりの機能をアセスメントする尺度,ひきこもり状態の程度をアセスメントする尺度,精神症状をアセスメントする尺度,主観的幸福感をアセスメントする尺度,社会参加困難感などが含まれた。 参加者はひきこもり状態の経験者16名(女性10名,男性6名)であり,年齢は26~63歳であった。16名のうち3名は現在もひきこもり状態であると回答した。質問紙調査の結果,最もひきこもっていた時期と比較して,現在は有意にひきこもり状態の程度(p < .001, d = 1.68),精神症状(p < .001, d = 1.49),社会参加困難感(p < .001, d = 1.45)が低く,主観的幸福感が高かった(p < .001, d = 1.51)。また,半構造化面接の結果,最もひきこもっていた時期においては,対人関係からの回避を含む社会的負の強化という機能がひきこもりを維持させていた参加者が最も多かった(8名)一方で,現在においては,他者に媒介されない機能を含む自動的正の強化によってひきこもりが維持している参加者が最も多かった(7名)。
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