研究課題/領域番号 |
23K12930
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
川上 澄香 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (20882525)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 情報処理特性 / 学習 / 記憶 / 二次障害 |
研究実績の概要 |
本研究は、自閉スペクトラム症(ASD)者の二次障害の生じやすさの背景にあると推測される情報処理や学習、記憶上の特性を客観的指標により明らかにしようとするものである。 自閉スペクトラム症(ASD)者は、うつや不安、ひきこもりなどの二次障害が生じやすい。その背景として、適応的でない学習様式(=短絡的連合学習)が存在する可能性があると臨床家の間では言われる。具体的には、ネガティブな経験が出来事の文脈情報を欠いた短絡的つながりのトラウマとして記憶される学習様式である。その結果、文脈にかかわらず同じ外見的特徴を持つ物・状況全てに対しストレス反応を呈するためそれらを避けがちになり二次障害を生じると考えられている。しかし、この学習・記憶上の特性は臨床報告に留まり、客観的な評価方法で確認されてはいない。 そこで本研究では、条件づけ課題を応用した心理学実験によりASD者が短絡的連合の記憶様式を持つかを検討するとともに、二次障害との関連を調査する。さらに、短絡的連合の記憶様式となる認知的メカニズムを探索し、ASD者の特性に合ったエビデンスに基づく介入法などの開発へ向かう第一歩とする。本研究は、ASD者における二次障害の心理学的基盤を理解しようとするものであり、ASD者の社会参加の促進と福祉の増進に広く貢献する。 初年度の進捗としては、臨床的知見として得られているASD者の短絡的連合の記憶様式が、条件づけ課題を応用した心理学実験上で測定可能かを検討するとともに、二次障害との関連についての調査を行う準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、初年度は、短絡的連合の記憶様式か文脈全体で残る記憶様式かどうかを評価する、条件づけを利用した心理学実験課題を作成し一般人口におけるASD特性の強さや不安傾向の強さとの関連を調べる予定であった。しかし、記憶様式が短絡的連合で残るか、それとも文脈全体で残るかの両側面を同時に評価できる実験課題デザインを作成するために、修正を重ねる必要があったため、データ収集開始を遅らせた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度のうちに、参加者募集に関して可能な範囲で準備を行っていたため、速やかにデータ収集を開始し、解析を行う。一般人口におけるASD特性の強さと記憶様式の特徴が明らかになった場合、臨床群においても実験を行い、同様の記憶特性が診断のつく者においてもみられるかどうか検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況が、当初の計画よりやや遅れているため、初年度に発生する予定であった出費が次年度にずれ込むことになった。計画していた研究の遂行に伴い、必要な物品の購入、参加者謝金、人件費などに使用する。
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