研究課題/領域番号 |
23K12995
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
加藤 睦也 岐阜大学, 工学部, 准教授 (40847026)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 振動積分作用素 / フーリエ積分作用素 / フーリエ乗子作用素 / 擬微分作用素 / 双線形作用素 |
研究実績の概要 |
2023年度は,本課題分では,以下のような2つの成果を得ることができた.ともに,宮地晶彦教授(東京女子大学),冨田直人教授(大阪大学),至田直人氏(名古屋大学)との共同研究である. 1.2010年頃のGrafakos-Pelosoによる論文を発端に,1次斉次な相関数をもつ直積型振動項の双線形フーリエ積分作用素に関する研究がはじまった.その後,Rodriguez-Lopez, Rule, Staubachによるいくつかの論文を経て,この作用素に関する研究はおおきく発展した.そして最近,Bergfeldtとこの3名は,相関数がs(≠1)次斉次の場合に,双線形振動積分作用素の有界性に関する考察を与えた.この作用素は,分散型方程式,例えば,シュレディンガー方程式(s=2),エアリー方程式(s=2, 1次元),4次シュレディンガー方程式(s=2),の基本解に由来するものである.彼らは,s=1の場合同様,双線形作用素を単純な2つの線形作用素の掛け算に分解し,線形作用素の有界性に帰着させることで有界性を得ている.本研究では,2つの掛け算に分解した後,各作用素のカーネルの漸近挙動に着目し,特異となる(危ない)領域を見定めることによって,彼らの結果を改良することができた.ただし,ここでの本質的なアイデアは,別課題の本年度分報告書で述べた成果のなかで用いられたものである.本成果は論文としてまとめ,現在投稿中である. 2.Bergfeldtらによる上記論文の中では,直積型振動項に対角線方向にも振動する項が加わった3つの相関数をもつ双線形フーリエ積分作用素(s=1),および,双線形振動積分作用素(s≠1)に対しても考察を与えている.本研究では,上記手法を繰り返すことで,少なくとも,Bergfeldtらによる結果を改良できることは分かった.しかし,ここで得た結論はさらに改良できる可能性が高いため,論文としてはまとめていない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直積型の振動項をもつ双線形フーリエ積分・振動積分作用素の場合には,最適性(必要条件)が分かっていない部分はまだ残っているものの,おおむね満足のいく結果を得ることができた.また,成果1では準バナッハ空間のいわゆるフルレンジへは到達できていないものの,その場合に対してもある程度の方針を立てることはできている.成果2についても,ほんの一部分ではあるが最適な条件の見当が付いている.そのため,多少楽観的かもしれないが,今のところはおおむね順調に研究を進めることができているように思う.
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今後の研究の推進方策 |
まず,進捗状況で述べたように,最適性が分かっていない部分のことやフルレンジの場合のことも考えたい. また,研究実績概要の成果2で述べたように,3つの相関数に対する双線形フーリエ積分作用素(s=1)や双線形振動積分作用素(s≠1)の有界性に関しても,既存結果のさらなる改良を目指す.そのためには,まずは劣臨界であったとしても,ある程度の目処を立てることを目標とする.可能であれば,その最適性を模索したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
数年前に別課題の科研費で購入したパソコンが今でも問題なく使えているため,当初予定していたパソコンの購入を見送っており,物品費分において次年度使用額が生じている.今後,もしそのパソコンに不調が現れた際に,この余っている分を充てる予定である.一方,旅費分に関しては,今年度は出張機会が以前と比べてかなり増えたため,当初の予定と大きな違いはない.
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