研究課題/領域番号 |
23K13010
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤木 結香 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (70912517)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク |
研究実績の概要 |
現実世界の複雑系を表すネットワーク(複雑ネットワーク)の多くに共通する性質として、ノードの持つエッジの本数(次数)がべき分布することが知られている。このような次数ゆらぎの強いネットワークでは、次数どうしの相関関係(次数相関)がネットワークの性質を決める上で重要な要素となる。特に、同程度の次数のノードどうしが隣接しやすい「正の隣接次数相関」と、異なる次数のノードどうしが隣接しやすい「負の隣接次数相関」のどちらをネットワークが有するかという違いは、ネットワークの頑強性やネットワーク上の拡散現象に大きな影響を与える。最近、多くの複雑ネットワークに次隣接以上に離れた次数相関(長距離次数相関)が現れることがわかったが、長距離次数相関をもつネットワークの一般的性質は明らかになっていない。長距離次数相関とネットワークの他の性質の関係を明らかにするには、ある一定の距離nだけ離れたノード間に次数相関を有しながらも、それ以外には完全にランダムなネットワークである「n次隣接相関ランダムネットワーク」を導入し、異なるnにおけるネットワークの性質の違いを比較する必要がある。本研究ではその第一歩として、ランダムなエッジの繋ぎ変え操作によってn次隣接相関ネットワーク(n=1,2)のサンプリングを行い、エッジ/ノードのランダム故障およびターゲット攻撃に対する頑強性を比較した。その結果、隣接次数相関だけでなく、距離l=2の長距離次数相関によってもネットワークの頑強性は変化することが明らかになった。以上の結果を日本物理学会で発表し、投稿論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度では、数値計算を用いて距離n=2の長距離次数相関とパーコレーション問題の間の一般的関係解明に取り組む予定であった。そこで、距離nまでに次数相関を有し、それ以外は完全にランダムであるn次相関ランダムネッ トワークのサンプリングを行った。指数ランダムグラフモデルによって正または負の隣接次数相関を有する1次相関ランダムネットワー クを生成し、隣接次数相関を保持しながら距離n=2に正または負の長距離次数相関が生じるようなエッジのつなぎ替え操作を行い、2次 相関ランダムネットワークを生成した。得られたネットワーク上でボンド(サイト)・パーコレーションを実行しその臨界的性質を調べた。これらの結果から、距離n=2の長距離次数相関がネットワークの頑強性へ与える影響を明らかにすることができた。よって、研究は順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、数値計算を用いて2次隣接相関ランダムネットワークのサンプリングを行い、パーコレーション転移点およびターゲット攻撃に対するネットワークの頑強性とn=2の長距離次数相関の関係を解明した。この結果、2次の長距離次数相関はネットワーク頑強性やコミュニティ構造と深い関係にあることがわかった。令和6年度ではさらにこの研究を進め、得られた2次隣接相関ランダムネットワークのサンプルを用いて、パーコレーション転移だけでなく感染症や振動子現象と深い関係があるネットワークの固有値問題を調べ、長距離次数相関とどのような関係にあるのかを明らかにする。この方法については、隣接行列およびラプラシアン行列の固有値問題を数値計算によって直接計算するとともに、非後退行列を用いた解析計算の両面から進めていく。また、異なるサイズの2次相関ランダムネットワークを用いて有限サイズスケーリングを行い、パーコレーション臨界点だけでなく臨界指数の特定を行うことで、距離n=2の長距離次数相関が普遍性クラスへ与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、数値計算におけるプログラムの見直しにより効率的な計算が可能になり、今年度の研究計画で使用を予定していたワークステーションの購入を延期したためである。
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