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2023 年度 実施状況報告書

ガラスの局所構造とその運動性の関連の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K13076
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

中澤 克昭  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYSリサーチフェロー (50972155)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワードガラス転移 / 走査型透過電子顕微鏡 / 5D-STEM / 4D-STEM
研究実績の概要

本研究では、ガラス転移現象の解析のための新規手法の開発が主目的である。特に、ガラス転移点近傍での運動と構造の間の相関の解析を目的としている。ガラス転移では,急冷により高温での原子や分子の無秩序な原子配置が規則的に配列せずに凍結する。この凍結は数度の温度変化で急速に進行するが,その機構は十分に理解されていない。この急速な凍結には,凍結直前に観察される原子運動の不均一性(動的不均一性)と原子構造の不均一性(構造不均一性)が関わっていると考えられている.しかし,これらの不均一性の経時変化や両者の相関については,十分な実験による研究がされておらず,シミュレーションにより動的不均一性と構造不均一性の間に関係があることが示唆される程度である.本研究では両者の時間発展と相関の実験による計測を目指す.
動的・構造不均一性の同時観察には、nm程度の空間分解能、秒程度の時間分解能、構造変化を検出する能力の両立が必要であった。このような条件を満たす手法として、収束電子線による回折図形の時空間分布の取得を目指した。回折図形には原子構造が反映されており、回折図形の変化から構造変化の評価が可能である。また、電子線を収束させることで、空間分解能を制御できることが知られている。申請者は、さらに収束電子線により同一領域を繰り返し走査させることで、回折図形の時空間分布を取得可能であると考えた。上記のような計測を可能にする撮影条件の探索および、ソフトウェアの開発を行った。その結果、空間分解能が0.2 nm程度、時間分解能が4秒程度で回折図形の時空間分布を取得可能な5D-STEM法の開発に成功した。また得られたデータを解析した結果、規則化した原子構造ほど運動が遅くなる傾向があることを発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初予定していた、収束電子線による回折図形の時空間分布を取得する5D-STEM法の開発は完了している。また、5D-STEMの適用によるガラス中の運動・構造の同時観察も既に行っており、高温ほど構造秩序が高くなり、運動が早くなる過程の観察や、構造秩序が高いほど運動が遅くなる構造・運動相関も確認している。そのため、申請者が当初予定していた研究計画は一年目の段階で既に十分に達成されている。
また、関連した研究として、金属ガラスに対して高圧ひずみ加工を行った際の構造変化の観察も行っており、高圧ひずみ加工により金属ガラス中から結晶likeな構造が破壊されることを発見した。
また、金属ガラスの組成の違いによるガラス転移点近傍での運動の違いに関する研究もすでに開始している。
このように当初予定していた研究をすでに達成しており、付加的、発展的な研究も行っていることから当初の計画以上に進展していると申請者は評価している。

今後の研究の推進方策

今後の研究方針としては、開発した5D-STEM法の改良と、適用対象の拡大を計画している。現段階では、高速度ピクセル分割型検出器を用いて計測している。この検出器はフレームベースでの測定により高速度での撮影を可能にしているが、一方で任意のフレームレートでの観察は難しい。この点が数十分以上の長時間の観察を難しくしている。そこで、フレームベースではないカメラを利用した長時間観察用の5D-STEM法を開発する。この手法はガラスの低温でのダイナミクスの観察に適している。新規開発手法を用いてガラスの低温ダイナミクスの観察を予定している。
また今後の方針としては適用対象の拡大も計画している。5D-STEMは回折図形の時空間分布を取得する手法であり、回折図形を通じて時間・空間における不均一性を観察できる。また、回折図形には多種多様な情報が含まれており、回折図形から原子構造、電磁場などの計測が可能である。原子構造の変化などを伴う結晶化現象などに本手法を適用する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していたよりも研究が順調に進んだため、当初想定していたよりも試行錯誤の回数が少なくなった。そのため、必要となるその場観察用加熱チップ、およびFIBによる仕様作成回数が少なくなり仕様する費用が少なくなった。
次年度に繰り越す費用の使用方法としては、新たな対象に対して5D-STEM法の適用を予定しているため、それらの試料の購入費用、その場観察用加熱チップおよび、TEM用試料作製費用に充てる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Nanoscale strain mapping and symmetry analysis of Zr50Cu40Al10 metallic glass rejuvenated by high-pressure torsion via 4D scanning transmission electron microscopy2023

    • 著者名/発表者名
      Nakazawa K.、Lee S.、Niitsu K.、Kameyama M.、Sannomiya T.、Kohara S.、Mitsuishi K.、Tsuchiya K.
    • 雑誌名

      Journal of Non-Crystalline Solids

      巻: 606 ページ: 122197~122197

    • DOI

      10.1016/j.jnoncrysol.2023.122197

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of temporal series 4D-STEM and application to relaxation time measurement2023

    • 著者名/発表者名
      Nakazawa Katsuaki、Mitsuishi Kazutaka
    • 雑誌名

      Microscopy

      巻: 72 ページ: 446~449

    • DOI

      10.1093/jmicro/dfad006

  • [学会発表] 回折図形の時空間分布を用いた金属ガラスの 動的・構造不均一性の関連の解明2023

    • 著者名/発表者名
      中澤 克昭, 三石 和貴, 小原 真司, 土谷 浩一
    • 学会等名
      第9回材料WEEK
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of time-series 4D-STEM method and its application for glass transition phenomena2023

    • 著者名/発表者名
      中澤 克昭, 三石 和貴
    • 学会等名
      The 20th International Microscopy Congress (IMC20)
    • 国際学会
  • [学会発表] Simultaneous measurement of dynamic and structural heterogeneities in glass via 5D-STEM2023

    • 著者名/発表者名
      中澤 克昭, 小原 真司, 三石 和貴
    • 学会等名
      IAMnano2023
    • 国際学会
  • [学会発表] 回折図形の時空間分布を用いたガラス転移温度における動的・構造不均一性の計測2023

    • 著者名/発表者名
      中澤 克昭, 小原 真司, 三石 和貴
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会第79回学術講演会
  • [学会発表] Relationship between dynamic and structural heterogeneities in metallic glass detected by 5D-STEM2023

    • 著者名/発表者名
      中澤 克昭 , 三石 和貴 , 小原 真司 , 土谷 浩一
    • 学会等名
      The 9th International Discussion Meeting on Relaxations in Complex Systems
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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