研究課題
本研究はオランダDIFFER所有の直線型装置Magnum-PSIを用いた実験とモデリングから、核融合炉の炉心プラズマから周辺領域への過渡的な熱粒子放出現象に伴い、ダイバータ領域の非接触プラズマがどのように応答するのかその物理を解明するものである。初年度である2023年度は、Magnum-PSIにおける非接触プラズマへの過渡的な熱パルス重畳実験を実施した。ヘリウムを用いた定常プラズマを生成し、追加のヘリウムガス入射によってターゲット前のプラズマを非接触状態にする。さらにコンデンサバンクによる放電電力の瞬時的な増加によって熱パルスを重畳させる。その時の磁力線に沿った装置上流および下流位置における電子温度・密度を時間分解トムソン散乱計測によって計測した。電子温度・密度から見積もられるパルス熱負荷は上流から下流にかけた輸送によって減衰した。しかし、ターゲット領域のガス圧を上昇させプラズマ-中性粒子相互作用を促進させても、上流から下流にかけてのパルス熱負荷の減衰過程は大きく変わらなかった。ガス圧を増加させることで電子温度が低下しているため、運動エネルギーによる熱負荷への寄与は減少していると考えられる。一方で、高ガス圧で促進される電離過程によって下流側の電子密度が増加し、表面再結合による熱負荷への寄与が増加したため、熱負荷が変わらなかったと考察している。今後は高速カメラや分光計測などによるプラズマからの発光が示す情報を含めた議論を行なっていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
直線型装置Magnum-PSIを用いた実験を遂行し、2023年度中にデータ解析を開始することができた。取得データの解析は順調に進んでいる。
2024年度は直線型装置Magnum-PSIを用いた実験データの解析を軸に、引き続き研究を行う予定である。具体的には、まだ詳細まで解析してこなかった、高速カメラによるプラズマの発光、分光計測による各励起準位のポピュレーションの時間発展、赤外線カメラによるターゲット熱流束、などの解析を行う。さらに、プラズマ流体コード-中性粒子輸送コードによるシミュレーションも実施していく予定である。
2023年度はテレビ会議等によって旅費を削減した。さらにプラズマ流体コードのシミュレーションにおいても、名古屋大学のマシンを活用させていただくことで費用を削減した。2024年度は本年度の繰越予算で実験に関する機器を充実させる予定である。
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