研究課題
原子核の中性子吸収反応において、時間反転対称性の破れが大きく増幅される可能性が示唆されており、この増幅機構を用いた感度の良い時間反転対称性の破れ探索実験を計画している。本研究ではこのための基礎研究を推進している。J-PARC MLFにて静的偏極139Laターゲットと偏極中性子ビームを用いて139Laと中性子のスピン依存する吸収断面積の測定を行った。時間反転対称性の破れが大きく増幅されている139Laの0.75eVのp波共鳴に対して初めてスピン依存する断面積の測定に成功し、そこからp波共鳴の中性子部分幅を決定することに成功した。これを用いて139La p波共鳴における時間反転対称性の破れの増幅率を決定した。これは中性子部分幅の終状態に依存しない決定であるとともに、全核種で初めてp波共鳴に対するスピン依存断面積を測定した結果である。本結果は素粒子原子核物理だけではなく、核データなどで重要となる複合核スピンの決定手法としても注目されている。また中性子偏極デバイス用にビームラインに導入可能なレーザー偏極装置を開発し、中性子ビームラインにて動作テストを行なった。3日以上の長時間にわたり安定した中性子偏極率を達成できることが確認された。これに加えて時間反転対称性の破れ探索実験の原理検証のためのスピン交換法を用いた偏極Xeターゲットの開発を推進している。電子スピン共鳴法を用いたXe偏極率絶対値の測定手法を開発し、高い信頼度で129Xeおよび131Xeの偏極率を決定することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
J-PARC MLFのトラブルにより一部のビーム実験が実施できなかったが、偏極Laと偏極中性子のスピン依存断面積の測定に成功していることから、概ね順調に計画は進行していると言える。
中性子偏極デバイスの性能をさらに改善することで、139Laと中性子のスピン依存断面積の測定実験の更なる高度化を行う。これに加え偏極Xeターゲットと偏極中性子ビームを用いた原理検証実験を推進する。
中性子ビーム実験がキャンセルとなり、一部の旅費や装置購入費の使用が遅れたため。
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Physical Review C
巻: 109 ページ: L041602
10.1103/PhysRevC.109.L041602
巻: 109 ページ: 044606
10.1103/PhysRevC.109.044606