研究実績の概要 |
本研究は未発見の極稀事象(二重ベータ崩壊)を、新しい超伝導検出器を用いて観測することを目指している。まずは目的を達成するための超伝導共振器を用いた検出器(超伝導力学インダクタンス検出器[KID])を作製できるかどうかが重要な点であった。KIDに必要な基板部分に極稀事象のターゲット原子核を直接含有させることで観測対象と検出器とが一体となった検出器を念頭に置いているが、ターゲット原子核であるジルコニウム-94についてジルコニウムは金属であるため、そのままでは基板としては使用できない。そこで酸化ジルコニウムを検討し、利用可能な形で提供されるイットリア安定化ジルコニア[YSZ]を基板材料に選定して超伝導検出器の作製にあたった。超伝導金属材料にはニオブを用いた。作製を無事に行え、さらに希釈冷凍機により温度150mKで評価を行って超伝導共振器としての応答を確認することができた。共振ピークの鋭さを表す指標である共振Q値は100,000程度が得られた。さらに、YSZのイットリア含有率による違いも考慮し、容易に入手可能な9.5, 13, 20mol%含有の3種類のYSZ基板を用意して作製・評価を行った。いずれも応答が確認でき、YSZを用いた超伝導共振器の理解が深まった。以上の成果は国際会議(ポスター発表)2件、プロシーディングス1報(査読中)、国内会議5件(口頭発表3件、ポスター発表2件)で発表した。以上より今後に向けて、より良い共振特性を得るための設計変更や放射線検出実験などの課題を得ることができた。
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