研究課題/領域番号 |
23K13175
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐久間 杏樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10974248)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 中赤外レーザー分光装置 / 凝集同位体比 / 炭酸塩 |
研究実績の概要 |
地球の過去の環境を調べるうえで、水温は重要な指標である。アルケノン温度計や有孔虫殻のMg/Ca比などの手法を用いて復元が行われてきたが、それぞれの手法にも問題点は存在するため、複数の水温プロキシを用いて評価する必要性が指摘されている。炭酸塩の凝集同位体比(13C18O16Oの存在度の割合)は水温と相関することが示されており、新たな古水温の指標として注目されている。しかし、従来の質量分析計を用いた測定では同じ質量の分子を区別することが出来ないため、存在度が小さい凝集同位体の測定では精度や必要な試料量などに原理的な限界が存在する。本課題では新たな同位体比の分析手法である中赤外レーザー分光装置(TILDAS)を用いた凝集同位体比の測定手法の確立を目指す。TILDASによる測定は、それぞれの原子結合に固有の波長において分子内振動によってレーザー光を吸収する現象を用いており、質量数によらず直接それぞれの同位体比を計算することが出来る。今年度は、存在度が大きく調整が容易であると考えられる炭素・酸素同位体比の吸収波長を含むレーザーを用いて、研究協力者と共にブランケット法での測定プログラムの改善を試みた。レファレンスガスとサンプルガスの導入量の調整や、炭酸塩から二酸化炭素ガスを発生させる反応に用いるリン酸の滴下方法などの改善によって、酸素・炭素同位体比について、より精度の良い測定を行うことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中赤外レーザー分光装置が配備されている研究室において、炭酸塩の酸素・炭素同位体の分析に従来用いられてきた質量分析計が故障したことによって、代替手段として中赤外レーザー分光装置を用いる必要があったため、マシンタイムが当初の見込みより減少した。そのため、予定よりも凝集同位体比の測定手法の改良実験が遅れている。一方で、酸素・炭素同位体比の分析についての測定プログラムの改良は行っており、凝集同位体比の測定についても改善されたプログラムを用いることで高精度な測定が可能になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度の実験によって改善されたブランケット法の測定プログラムの、微量な同位体の測定への適用を試みる。昨年度の実験に用いたレーザーの測定波長の範囲内には、凝集同位体比と同様に微量の同位体である17O存在度異常のピークが含まれている。このピークを用いて微量な同位体の測定を行った場合の、測定プログラムの評価と改善を行う。来年度以降、17O存在度異常の測定について試料の量や測定精度の十分な値が得られた後に、すでに配備されている凝集同位体比の吸収波長を含むレーザーを用いて、凝集同位体比の測定手法についての評価を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
レーザー分光分析に関連する試薬やガスなどの消耗品を経費として計上していたが、マシンタイムの減少に伴って支出も減少した。消耗品は次年度以降の実験時に必要となるため、その際に使用する予定である。
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