研究課題/領域番号 |
23K13183
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
澤 燦道 東北大学, 理学研究科, 助教 (90972430)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 延性せん断帯 / 内陸地震 / 結晶粒成長 / フェーズフィールド法 / データ同化 / 再結晶 |
研究実績の概要 |
本研究は,粒成長その場観察―粒成長フェーズフィールドシミュレーション―データ同化を組み合わせ,活断層直下の下部地殻延性せん断帯における岩石の粒成長速度を定量的に解明することを目的とする. 下部地殻の斑れい岩は主に斜長石で構成されているため,斜長石の合成多結晶体を作成することを試みた.酸化アルミニウム等の酸化物を出発物質とし,混合酸化物を先行研究に基づいて高温で加熱し,斜長石の人口粉末の合成を行った.合成した粉末はX線回折法(XRD)により分析し,斜長石が合成されていることを確認した.出発物質の酸化物の粒径はサブミクロンであるため,斜長石粉末も非常に細粒となった. 粒成長とデータ同化のフェーズフィールドシミュレーションコードは別々に作成を行っていた.本年度は,別々のソースコードを1本化し,粒成長フェーズフィールドシミュレーションにおいてデータ同化を行うことが可能となった.データ同化における双子実験により,フェーズフィールドシミュレーションにおいて重要なパラメータであるフェーズフィールドパラメータの推定を行い,正しくデータ同化が行われていることを確認した.計算のコストが非常に高かったため,部分的に並列化を行い,計算時間を削減した.また,新しく鉱物の再結晶挙動を再現する,再結晶フェーズフィールドシミュレーションのコードを開発した.再結晶のシミュレーションにおいては,転位密度(弾性歪エネルギー)を低く設定した粒子が,転位密度の高い粒子を取り込みながら成長していく様子を観察することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は(A)実験:粒成長その場観察,(B)数値計算:粒成長フェーズフィールドシミュレーション及びデータ同化の2本立てである. (A)斜長石の粉末の作成には成功しているが,粉末を焼き固めて空隙のほとんどない斜長石多結晶体の作成には取りかかれていない.したがって,実験の計画はやや遅れている. (B)粒成長やデータ同化のシミュレーションコードだけでなく,再結晶のコードも準備することができたため,当初の計画以上に進行している. 結果として,計画は概ね順調に進展している
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今後の研究の推進方策 |
粒成長その場観察では多結晶体表面の2次元平面の粒成長を観察する.先行研究によって,2次元平面の粒成長速度と3次元平面の粒成長速度は異なることが明らかになった.明らかにしたいのは3次元の粒成長速度であるため,2次元の粒成長その場観察とシミュレーション・データ同化を組み合わせることで,3次元の粒成長速度を明らかにすることを試みる.粒成長その場観察で得られた実験データから粒成長フェーズフィールドシミュレーションとデータ同化を行い,多結晶体表面の2次元粒成長を説明するような3次元粒成長の挙動を数値計算で求める. 粒成長その場観察に向けて,斜長石多結晶体の作成を行う.斜長石粉末をCIP(冷間等方圧加圧)法を用いて押し固めたあと,真空下で焼結を行う.焼結された多結晶体は研磨により,薄膜にする.薄膜にした多結晶体は加熱用電極の上に乗せてSEMの中に入れ,SEM内で高温にすることで粒成長その場観察を行う. 斜長石多結晶体で技術が確立したあと,天然の斑れい岩マイロナイトを用いてその場観察を行う.必要な天然の斑れい岩マイロナイトは北海道の日高山脈で産出するが,数年前の台風によりアクセスが困難となっている.共同研究者と相談し,斑れい岩マイロナイトが別の産地で産出しないか調査を行う.産出がない場合,所属研究グループで所有する試験機で実験的に作成することも検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
残金は端数であり,翌年度の使用計画に変更はない
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