研究課題/領域番号 |
23K13190
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
加藤 千恵 九州大学, 比較社会文化研究院, 助教 (00828478)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 古地磁気強度 / 岩石磁気 / 斜長石 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、長周期の地球磁場強度変動を明らかにすることを目的に、短周期の磁場変動を平均化して記録していると期待される深成岩から過去の地磁気の情報をよく保持していると推定されるケイ酸塩鉱物単結晶の分離・選定と、それらの試料を用いた古地磁気強度推定を行っている。2023年度は、山梨県にて採取した道志ハンレイ岩(500万年前)試料7点からそれぞれ粒径500ミクロン程度の斜長石結晶を100~200試片(粒)程度分離し、岩石磁気分析および予察的な古地磁気分析を行った。低温磁気分析においては、すべての試料で120ケルビン付近に明瞭なフェルベー転移が観察され、チタンに乏しく酸化されていないマグネタイトが磁化を担うことが分かった。残留磁化の大きさと、低温消磁の度合いから推定されるマグネタイトの粒径から、最もよく古地磁気記録を保存していると期待される試料1点を選定し、自然残留磁化測定、段階熱消磁実験、段階交流消磁実験、非履歴性残留磁化異方性測定を行った。測定したすべての試片が有意な残留磁化を示した。自然残留磁化の段階熱消磁の結果、アンブロッキング温度は400℃~580℃であり、特に560℃~580℃の狭い範囲で集中的に消磁されることが分かった。MDF(交流消磁により磁化強度が2分の1になる交流磁場の振幅)は10~15 mTと比較的低く、消磁曲線がジグザグになるなど交流消磁に対して不安定な挙動を示すものもあった。これらの結果に基づき、古地磁気強度測定の条件等を検討した。また、以上に関連して、ケイ酸塩単結晶を用いた古地磁気強度測定に関する総説論文をKato et al. 2024 (Earth, Planets and Space)として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
液体ヘリウムの供給不足により、九州大学に設置されている超伝導岩石磁力計の運用を停止していたため、古地磁気強度測定を予定通り進めることができなかった。代替として、高知大学海洋コア国際研究所の共同利用・共同研究制度を利用し、同研究所設置の機器を用いて岩石磁気測定および予察的な古地磁気測定を進めた。また、試料採集も予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
液体ヘリウムの入手の目途が立ったため、24年度中に超伝導岩石磁力計への充填を行い、運用を再開する予定である。磁力計の運用を再開し次第、道志ハンレイ岩から分離した斜長石単結晶の古地磁気強度測定を、2023年度に行った岩石磁気分析の結果をもとに行う。また、延期している試料採集を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度には試料採集を行うことができなかったため、試料採集にかかる旅費および試料観察のための顕微鏡の購入費が未使用となっている。未使用額は次年度以降に実施する試料採集および顕微鏡の導入に使用する。また、超伝導磁力計に充填する液体ヘリウムの購入費に充てる。
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