研究実績の概要 |
超深部ダイヤモンドであるCLIPPIRダイヤモンド中に包有物としてFe, FeS, Fe3Cなどの鉄の化合物やメタンや水素などが取り込まれていることから、その生成にFe-Ni-C-S-H組成の溶融鉄が関与すると考えられている。本研究では、軽元素に富む溶融鉄から析出したと考えられてる超深部ダイヤモンドの生成条件の特定を行い地球深部における軽元素循環の解明に取り組む。
CLIPPIRダイヤモンドの生成に水素が関与することは間違いない。Fe-S系やFe-C系の相関係は多くの研究がなされているが、Fe-H系の相関係は決定されていない。そこでCLIPPIRダイヤモンドが生成されるマントル遷移層の圧力条件でのFe-H系の相図の決定を行った。その結果、低温側では低水素条件では六方晶構造(hcp)が安定であり、高水素条件では二重六方晶構造(dhcp)が安定であることが明らかになった。hcp相の最大水素量はFeHx, x=0.5であり、それ以上の水素が存在するとdhcp相が出現した。また、両者の相の間には共存領域があることも示唆された。一方で、高温側では先行研究で報告のあるように面心立方構造(fcc)が安定であることが確認された。溶融温度の決定を行うため高温発生を試みたが、実験中に予期しないヒーターの不安定化が起こり溶融されることには成功したものの正確な溶融温度の決定には至らなかった。定性的には、水素量は多いほど溶融温度は減少する傾向にある。
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