研究課題/領域番号 |
23K13245
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
本田 拓朗 大分大学, 理工学部, 講師 (50850161)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 回転軸シール / エラストマ / 複合材料 / セルロースナノファイバ / 水潤滑 |
研究実績の概要 |
回転軸シールにおけるシールリップの潤滑性能は回転軸の低トルク化やシール寿命に大きく影響する.また,潤滑液として作用すべきは,密封対象流体そのものであり,油潤滑に頼ることができない水環境では,シールリップの潤滑が困難となる.そこで,密封対象として水を想定し,水潤滑によるシールリップの低摩擦化と長寿命化を目指すために,親水性エラストマを母材とする複合材料からなるシールリップの開発と性能評価を行った. シールリップにおける摩擦と漏れをコントロールする要素として,シールリップが軸に与える緊迫力とシールリップによる水(潤滑液)の保持が重要であり,親水性エラストマと親水性ファイバからなる複合材の配合組成について調製することで,適切な保水状態をつくりだし,許容可能な“にじみ”によって,滑らかで安定した“すべり”運転する条件を模索した.今回,親水性ファイバとして用いたセルロースナノファイバの場合,複合材料のヤング率はわずかに向上し,添加濃度よりも繊維長(繊維の解繊形態)による差異がみられた.また,電子顕微鏡観察から,親水性ファイバの添加が母材の多孔質構造を変化させ,静水圧下でのシールリップの保水性(透過抑制)に影響したと推定された.シールリップの運転中の摩擦挙動,漏れ挙動をリアルタイムで把握するための可視化試験装置を新たに設計製作し,既存のシール試験装置との併用評価を行った.さらに一部予定を前倒しして,シールリップ形状を成形するための打抜き加工装置を作製し,シールリップ寸法形状の追求を行った.これの結果比較により,各パラメータの理想値の蓄積がなされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シールリップ母材に添加するセルロースナノファイバが材料剛性にもたらす効果については想定とは異なる結果になる反面,親水性や保水性の向上につながり,にじみ(漏れ)の促進になっている結果が判明した.にじみをコントロールする材料組成について,シールリップの形状設計を含めて,さらなる試行錯誤が必要となった.また,シールリップの可視化装置の設計構造に大きなエラーはないが,想定よりも視野が悪く,改良を要する.緊迫力の測定については装置設計準備が遅れているが,次年度に軌道修正を図る.また,一部先行しているバルク材からの形状加工については,計画リードを維持したい.
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今後の研究の推進方策 |
母材の親水性エラストマに添加するセルロースナノファイバの配合効果について,更なる検証を進めるため,引張強度や保水性について実験比較をすすめる.同時にシールリップとしての機能を確認するため,成形方法や形状設計を含めたシールリップ試作し,シール性能試験を繰り返す.多角的な評価を行うための,緊迫力測定装置の自作や可視化装置の改良についても当初計画を満たすように進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費の支出が当初想定よりも少なくなった分,実験消耗部材の価格高騰などによって相殺されているが,わずかに残額が生じた.次年度以降も消耗部材の価格高騰が想定されており,残額はそれらに充当する予定である.
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