2023年度には、開発を効率的に進めるためのシミュレータの構築を行った。任意の位置に放射線源を設置した際の指向性ガンマ線検出器で得られる情報を模擬できるようになった。具体的には、線源とロボット間の距離に応じたガンマ線の入射角および入射数が取得できるようになった。これをROS(Robot Operating System)上で実装し、ROSライブラリにより環境情報(距離情報)が取得できることを確認した。現在は障害物がある環境下における線源探索のための経路計画に取り組んでいる。 更に、現時刻までの計測結果に基づいて次の計測点を決定するアルゴリズムを構築した。ロボットの1ステップの移動範囲の中で、新たな計測により最も情報量が増える位置を算出する手法を構築した。ガンマ線の入射角および入射数に応じた情報量基準を新たに定義し、その値に基づいて次の計測点を決める手法を構築した。障害物が存在しない環境下における単線源の探索を想定し、経路計画および線源の位置推定を行った。現在は複数線源の探索に取り組んでいる。 情報量基準に基づく計測点計画とは別のアプローチとして、ガンマ線の入射数から変化率を求め、線源までの距離を推定する手法を構築した。検出器から得られるガンマ線の入射角に基づき、ロボットが線源に向かって一定距離移動する際のガンマ線の入射数の変化率は線源強度に依存しない。このことから、線源までの距離が分からないというガンマ線検出器が持つ課題を解決し、より効率的な探索を実現した。現在はパーティクルフィルタを用いた短時間かつ高精度の線源位置推定手法の構築に取り組んでいる。
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