研究課題/領域番号 |
23K13296
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邉 智洋 新潟大学, 自然科学系, 助教 (80972380)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | テラメカニクス / 探査ロボット / 流動化現象 / 振動 |
研究実績の概要 |
令和5年度では,振動を与えた際の地盤変化現象の調査および振動を利用した地中移動機構の開発を行った.下記に実施した2点の詳細を記載する. (1)振動を与えた際の地盤内部で移動する物体が受ける抵抗力の変化の調査 地盤内部に物体を設置し,その物体が振動して移動した際に地盤から受ける力を測定した.測定では振動を与えない場合,振動を与えた後に移動させた場合,常に振動を与えながら移動させた場合などで行い,移動方向に対して地盤から受ける抵抗力や地盤内での浮力を測定した.測定の結果,振動を与えてから停止した場合は抵抗力が増加し,常に振動をさせ続けた場合では抵抗力が減少することが確認できた.浮力に関しては振動を与えない場合と比較して振動を利用した場合では増加することを確認した. (2) 振動を利用した地中移動機構の開発 (1)より得た知見を活用して地中移動機構を提案し,移動性能について検証を行った.提案した移動機構ではリニアアクチュエータの前方および後方に振動モータを取り付けており,伸縮動作と振動を組み合わせて動作することで地中を移動する.進行方向の振動モータを常に振動させ続け抵抗力を低下させる.後方では振動モータを振動させてから停止した状態にする.このように前方と後方で抵抗力の差を発生させることで前方への移動を可能にする.実際に実験を行い,前進できることを確認した.また,振動モータとリニアアクチュエータを組み合わせた機体について単体のものと複数組み合わせたものでも実験を行い,複数組み合わせたものの方が地盤上に浮き上がりにくいことを確認した.これは振動することによって浮力が増加するため,振動していない機体の部分が浮き上がるのを抑えているためであると考察する.(2)の成果より,振動を利用した地中移動機構の動作および構造について設計方針となる知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究計画において「振動による地盤変化現象と地盤内抵抗力の関係性についての整理」を記載している.「研究実績の概要」に記載した通り,令和5年度では,振動を与えた際の地盤内抵抗力の変化を調査しており,予定していた研究計画を達成している. また,得られた振動による地盤変化現象と地盤内抵抗力の関係性を活用して地中移動機構を提案している.そして,提案するメカニズムにおいて構造上のパラメータを変化させて走行性能を検証し,振動を利用した地中移動機構の動作および構造について設計方針を獲得している.この成果は研究計画記載の「振動を用いた地盤内抵抗力を変化させる制御メカニズムの構築」および「構築したメカニズムを利用した地中探査ロボットの開発および移動性能の検証」の達成に大きく寄与するものである. 以上の自己点検より,本研究は「おおむね順調に進展している」と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度では,提案する振動を利用した地中移動機構の構造および移動動作について改善を進める. 構造については,機体の表面形状について振動の有無などで効果的に地盤からの抵抗力を得られる形状を検討していく.提案する形状については地盤内で牽引し抵抗力を測定することで評価を行う予定である.令和5年度では振動を与えてから停止した場合は抵抗力が増加し,常に振動をさせ続けた場合では抵抗力が減少することが確認できた.また,振動を与えることで浮力が増加することも合わせて確認している.振動の与え方で生じる抵抗力の差が大きくなるような形状や振動によって生じる浮力を抑える形状などを提案することで,地中移動機構の性能の向上が期待できる. 移動動作については,振動時間や振動と伸縮動作の組み合わせについて改善を行っていく予定である.現在は振動による地盤変化現象と地盤内抵抗力の関係性について調査を進めているためこの知見を活用して改善を行っていく.具体的にはモデル化を進め,機体の進行方向に生じる地盤内抵抗力を報酬として遺伝的アルゴリズムなどを用いて移動動作の最適化を検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由として,令和5年度の研究成果を学術論文として発表する予定が遅れてしまったためである.現在,研究成果を宇宙航空関連の学術誌であるAerospaceへの投稿に向けて準備中である.生じた次年度使用額は学術論文への投稿費用へ使用する予定である.
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