研究実績の概要 |
本研究課題では、これまでに成果を挙げてきた分子間相互作用解析に関する知見を活かし、蛍光体から近赤外発光材料へのエネルギー移動により近赤外光の発現が可能な分散型電界発光(EL)素子を構築するとともに、同様に展開している排熱設計に関する知見を組み合わせることで、低温駆動化による発光増強を目指している。以下に、2023年度の研究内容を示す。 従来の分散型ELによる赤色発光では、発光層内にて2段階のエネルギー移動(蛍光体材料→緑色蛍光色素→赤色蛍光色素)が利用されてきた。しかしながら、エネルギー損失やデバイス構築の困難さの観点から不利となるため、1段階のエネルギー移動による赤色発光の実現が求められている。これに対し、大きなストークスシフトにより赤色発光を示す大環状ナフタレンジイミドを採用することで、蛍光体から直接のエネルギー移動により赤色発光を実現した。本知見を踏まえ、発光層内にZnS系蛍光体、赤色蛍光色素2-tert-Butyl-4-(dicyanomethylene)-6-(1,1,7,7-tetramethyljulolidin-9-yl)-4H-pyran(DCJTB)、近赤外蛍光色素Rhodamine 700を所定量添加した分散型EL素子を構築し、交流電圧を印加したところ、波長700 nm付近にRhodamine 700由来の発光ピークが観測された。このことから、蛍光体による青色発光を励起源としてDCJTBからRhodamine 700へのエネルギー移動による近赤外発光の発現に成功した。さらに、セルロース製の紙基板中に水和イオンの配位子置換反応によって吸光度制御可能なコバルト錯体を導入することで、周囲の湿度変化を発光色変化として可逆的に可視化できることを見出した。
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