研究課題/領域番号 |
23K13405
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中山 雅之 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (90943564)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 表層地盤 / 透過弾性波 / 非弾性応答 / 含水量 |
研究実績の概要 |
「繰り返し入力される強震動により,表層地盤の応答特性がどのように粘弾性的変化するかについて,室内実験を通してモデル化する」ことを目指して研究を開始した. 強震動を入力した際に模擬表層地盤が粘弾性的なふるまいを示すような実験・計測システムの開発に取り組んだ.模擬地盤には,工学基盤あるいは地震基盤としてセメントモルタルを,表層地盤として顕著な粘弾性を示すシリコンサンドを使用した.地盤作製および弾性波計測を繰り返しおこなうことで,再現性のある透過弾性波が得られるような地盤作製方法を確立した.さらに,強震動を地盤に入力する機構を開発するとともに,自身が開発した既存の弾性波計測システムを本実験に適用することで,強震動入力にともなう地盤応答特性のモニタリングを試みた. また,モデル化をおこなうにあたり,表層地盤の粘弾性的性質に関係するパラメタのひとつであると考えられる地盤の含水量が,弾性波の伝播特性にどの程度影響を及ぼすかを事前に把握しておくことは重要であると考え,年次計画を一部変更し,地盤の含水量変化に対する弾性波応答を調べることにした.フィールドにおいて,降雨を含む期間に計測された,表層地盤に埋設した振動源から放射される微弱な弾性波の連続波形記録を解析した.弾性波速度が降雨前後で顕著に変化する様子が観測され,地盤応答特性の粘弾性的変化をモデル化する上で地盤含水量の影響を無視できないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
表層地盤の粘弾性的変化を再現するための実験・計測システムの基盤部分の開発を完了した.各種パラメタを変えながら模擬表層地盤における粘弾性的変化の特徴を調べる予定であったが,年次計画を一部変更し,地盤含水量変化に対する弾性波応答の関係を調べることにしたため,当初の計画からはやや遅れていると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
表層地盤の粘弾性的変化に関係しうる入力震動特性および地盤物性に関するパラメタ (入力強震動の振幅・特徴的な周波数地盤の間隙率など) を変えながら,透過弾性波のピーク周波数と,弾性波速度と非弾性減衰を合わせ持つパラメタである複素インピーダンスの時間変化に着目しながら,地盤応答特性変化の特徴を理解する.まずは,1回の強震動を入力した場合の地盤応答特性変化の特徴について調べ,たのち,複数回の強震動を入力した場合の特徴を調べる.モデル化には,媒質の非弾性応答などに関する既存モデルを改良,組み合わせることを試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,実験・計測システムの基盤部分の開発にとどまったため,設備備品費および消耗品費が当初の計画より少なかった.次年度は,実験・計測システムの拡充をおこなうことを予定しており,次年度使用額は主に設備備品費および消耗品費に充てる. 模擬地盤を透過する弾性波の時空間変化についてスケール依存性も含めて調べるために,透過弾性波計測のための加速度計とチャージアンプを複数台追加で購入する.強震動を地盤に入力する振動発生器から放射される振動を制御・モニタするための加速度計の購入も予定している.スケール依存性を調べるにあたり,地盤作製用のアクリル容器やその容器を載せる加振ステージなどについて,既存のサイズとは異なるものを新たに購入する.本年度に購入予定であった実験時の温湿度管理に必要な材料についても購入する. 研究成果を公表するために国内外での学会発表をおこなうための参加費および旅費,国際学術誌において成果を公表するためのオープンアクセス論文投稿料,英文校閲費用については,当初の計画通りに執行する予定である.
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備考 |
以下の研究集会にて口頭発表をおこなった。 中山雅之・川方裕則・土井一生,実斜面における能動弾性波観測による降雨前と降雨後の地震波速度推定,2023年度東京大学地震研究所共同利用研究集会「地震波形解剖学3.0」ー高密度観測・高周波数地震学で視る地殻・マントル不均質構造ー,2023年
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