研究課題/領域番号 |
23K13438
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
仲田 章太郎 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30964019)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 露出柱脚 / 被災後補修 / コーン状破壊 / あと施工アンカー / 増打ち / 屋内運動場 / 避難所 |
研究実績の概要 |
2023年度は、脆性破壊であるコーン状破壊を対象とした、露出柱脚の増打ちによる被災後補修について検討した。増打ちコンクリート部の力学挙動を把握するために、要素実験を行った。実験のパラメータは、あと施工アンカーの本数、増打ちコンクリート部の柱主筋断面、新設アンカーボルトの埋め込み長さである。本研究により得られた知見を、下記にまとめる。 [1]柱主筋量により、定着部破壊と界面部破壊の破壊形式が異なることがわかった。また、破壊後も露出柱脚はある一定の耐力を維持する結果が得られた。 [2]被災後補修した露出柱脚のひび割れ耐力は、コーン状破壊耐力の計算値で評価できることがわかった。 [3]被災後補修した露出柱脚の最大耐力は、定着部破壊する場合、指針式とダボ効果の和として評価できる。一方、界面部破壊する場合、界面のせん断応力度と界面部の総面積の積として評価できる。したがって、最大耐力は、定着部破壊する場合の最大耐力を下限値として、界面部破壊する場合の最大耐力により評価できることを明らかにした。 [4]残存耐力は、定着部破壊と界面部破壊の破壊形式に応じて、破壊後に作用するあと施工アンカーと柱主筋がすべて降伏すると仮定して評価すると、実験値をよく再現できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は、「コーン状破壊を対象とした露出柱脚の増打ちによる被災後補修」に注力して研究を実施し、増打ちコンクリートによる被災後補修の有効性について示した。さらに、増打ちコンクリート部を対象としたFEM解析モデルも作成した。以上より、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、要素実験で得られた結果を基にFEM解析を行う。具体的には、増打ちコンクリート部の力学挙動を詳細に把握するために、あと施工アンカーの本数、配置、突出長さ、埋込み深さおよび目荒しの程度を変数としたパラメトリックな検討を行う。 さらに、残存耐力の評価、要素実験およびFEM解析より得られた知見を踏まえて、増打ちコンクリート部の部材実験を実施する。具体的には、コンクリートを増打ちし、あと施工アンカーを介して既存コンクリート部と増打ちコンクリート部を接合させ、柱型断面を増幅させ、露出柱脚の耐力回復および回転剛性の増加を図る。実験のパラメータは、損傷した試験体の残存耐力および補修部の柱主筋断面である。 これと並行して、ベースプレートを対象とした被災後補修について検討する。まず、ベースプレート降伏型の残存耐力を評価するために、露出柱脚を対象とした一定振幅下の多数回の繰返し載荷実験を行う。実験のパラメータは、ベースプレートの板厚と面積、柱型基礎コンクリートの断面である。実験では、ベースプレートの曲げ変形量、亀裂長さを計測し、これを残存耐力の指標とする。次いで、ベースプレート降伏型の被災後補修では、ベースプレートの曲げ変形に対してはカバープレートの増設、ベースプレートの亀裂に対しては再溶接を採用する。実験のパラメータは、残存耐力、カバープレートの板厚である。また、実験では柱型に作用する圧縮反力も計測し、サブテーマとして圧縮反力の位置を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた理由として、損傷した試験体の補修費用が想定していたよりも高額だったためである。したがって、2023年度と2024年度を合わせた助成金により、損傷した試験体に対して増打ちによる被災後補修を行い、部材実験を実施する計画である。
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