研究課題/領域番号 |
23K13509
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研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
笛木 隆太郎 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 海上技術安全研究所, 研究員 (80846056)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 金属疲労 / 疲労強度 / ニードルピーニング / 溶接継手 |
研究実績の概要 |
船舶の貨物倉区域の溶接部には応力が集中しやすい部分が多く、高い疲労強度が求められる。作業効率に優れた溶接部向けの疲労強度向上手法として、先端が球形のニードルで溶接止端部を繰り返し打撃するニードルピーニングがある。しかし、従来のニードルピーニングは施工後に高い応力が負荷された場合、導入された圧縮残留応力が減少し、疲労強度向上効果が低下することが報告されており、航行中に波浪による高応力を受けることが想定される船体構造部材への適用は見送られている。 本研究では、ニードルピンを大径化することで溶接止端部の応力集中低減効果を高め、応力下において圧縮残留応力が減少したとしてもグラインダ処理を上回る疲労強度向上効果が得られるようなニードルピーニング施工方法を明らかにするとともにその強度改善メカニズムを明らかにすることを目的とした。 2023年度は従来よりもニードルの直径および先端曲率半径が大きなピンを数種類試作し、施工完了までの時間および品質について溶接試験体への試験施工を通して調査することで、比較的短時間で高品質な仕上がりを両立する施工方法を見出した。 最適化した施工方法で主板厚22mmのT字型溶接試験体にニードルピーニングを施工し、疲労試験を実施した。疲労試験における応力比は0.05、繰り返し周波数は6 Hzとした。200万回の繰り返しに耐える応力振幅の最大値(200万回疲労強度)は溶接まま材が45 MPaであったのに対し、ニードルピーニング施工材は110 MPaとなり、144%の大幅な強度改善効果が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り研究が進捗していることから、おおむね順調に進展しているものと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
過大な圧縮荷重を受ける場合など、これまでニードルピーニングによる疲労強度改善効果が大幅に低減するとされてきた荷重条件下において、本研究で開発した新たなニードルおよび施工方法(新工法)を適用した場合の疲労強度を調査する。これを従来工法での疲労強度と比較することにより、新工法の有用性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の残額・次年度使用額は30円とごくわずかであり、計画通り予算執行ができたものと評価する。 次年度使用額については次年度実施予定分の試験体製作費等に充当する予定である。
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