研究課題/領域番号 |
23K13566
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹村 謙信 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (10909831)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 金属薄膜 / センサ / 電気化学 / 光科学 / ナノ構造体 |
研究実績の概要 |
本年度は主目的であるバイオセンサ関連についてバイオ材料を鋳型とすることでナノスケールまで空間保存が可能である点を証明した。また、生体ホルモンの一種であるプロゲステロンと微生物である原虫を鋳型とした空間保存電極を作製し、電気化学計測に応用している。ナノスケール構造を生物試料から作製した電極は重金属検出用の電極として利用され、ヒ素を対象に市販電極の100倍の感度向上に成功した。また、原虫を対象に実施したバイオセンシングでは10 cell/mlの濃度の溶液で検出信号を確認することに成功した。また、プロゲステロン電極においては1 nMの感度を達成している。これらは全て抗体などの捕捉物質を使用しておらず、成膜に使用した金属材料はセンシングした後に分離回収が容易な基板である。研究目的であるサステナブルなバイオセンシング基板開発を達成するセンサデザインとなっている。 また、副次的な成果として、バイオイメージングにおいて高い導電性を達成するために、磁気的に制御されたカソードを用いて、低温プラズマ蒸着と加速電子線照射を試料上で実施した。ダンゴムシや蝶の羽のような高度に構造化された三次元試料を、金属蒸着のみを用いて高倍率で高効率に観察することができる。この方法は、前処理を必要とせず、1台の蒸着装置で電子顕微鏡による生体試料の表面分析が可能であるため、バイオイメージングの分野で利用しやすい。 全体として、主目的であるバイオセンシングも予定通りの進捗を得ており、副次的な成果も複数得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の主目的となるインプリンティングセンサーに関しては分子レベルまで、一定の電気化学信号を得ることに成功している。これは2024年度の前半までに達成すべき内容であり、当初の進捗予定をフォローしていると考える。光を用いたセンシングについてはこれまで顕微鏡ラマン分光を用いたアスコルビン酸の増強スペクトル取得に挑戦しており、まだ顕著な成果は得ていない。これは成膜時における金属膜の膜厚や成膜条件が微小空間形成に非常に重要な要因であることから、条件的不適状態であるため生じた課題である。これを解決することで光によるセンシングも可能になると推察する。この解決のための条件設定については既に検討が一定度完了しており、6月中の実施予定である。 全体として、当初の予定はおおむね達成しており、今後の研究進捗も大きな障壁はない。 以上の結果より、自己評価を2とした。
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今後の研究の推進方策 |
1:ターゲット制御手法について次年度は微粒子を大きさ依存で30 nm単位の分離が可能な流路構造をデザインし、インプリンティング金属基板上にナノスケールの材料のみを流し込むことで夾雑物中からの高選択性検出の可能性を向上させる。 2:化学・バイオセンサ応用:既にアスコルビン酸の形状を保存した金属電極の合成に成功している。今後はラマン分光器を用いて一般的な平滑金薄膜と形状保存金薄膜の間でのSERS効果によるラマンスペクトルの増強効果差を確認する。 3:今年度までに得ているプロゲステロン形状保存電極及び原虫形状保存電極を用いたバイオセンシングに関連する研究成果を論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要物品を揃えた際に当初の予定額より請求額が少額であったため、差額が生じた。 残額については溶液採取用ピペットのチップ購入費用として計上する。
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