分子スケールでは、凍結保護剤に関するコンピュータ支援型分子設計手法を開発した。まず、文献調査により、細胞内氷晶形成を防ぐ上で重要な物性値を3つリストアップした。次に、機械学習を用いた計算化学的評価により、リストアップした3つの物性値を評価することで、実験的評価および検証実験をする物質を絞り込んだ。さらに、実験的評価により、凍結濃縮の影響を防ぐ物性値として、細胞膜への活性値を評価した。そして、ヒトiPS細胞を用いた凍結実験を行い、有望な物質群の方向性を確認した。 細胞スケールでは、細胞の凝集体であるスフェロイドに関する凍結プロセスの検討を行った。まず、1細胞に関する凍結プロセスモデルをスフェロイド向けに拡張した。拡張したモデルは実験データを用いて妥当性を確認した。次に、モデルを用いたシミュレーションにより、解凍後の細胞生存率を評価した。そして、その結果からスフェロイド向け凍結プロセスの製造可能領域を得た。 プロセススケールでは、連続凍結プロセス設計に取り組んだ。まず、数値流体力学に基づく数理モデルを構築した。モデル構築の中で、細胞外液の過冷却を考慮できるモデル化に成功した。次に、大型プログラムディープフリーザーによる温度測定データにより、構築したモデルの妥当性を確認した。そして、構築したモデルを用いた数値シミュレーションにより、ヒトiPS細胞向け凍結プロセスのスケールアップの可能性を確認した。
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