地球温暖化の進行に伴い、低温での効率的な化学合成の開拓は必須である。従来型の化学合成は不均一系触媒が用いられることが多いが、触媒表面の不均一性、担体の存在、触媒-担体間の相互作用など、多くの構成要素のために化学的理解が難しい。本研究課題では、メタンの酸化カップリング反応(OCM)を酸化的化学合成のモデルとして、マイクロバブルを用いた均一系化学合成の開拓を行う。酸素やオゾンのマイクロバブルは常温で酸化力の強いOHラジカルを生成し、有機物除去や殺菌に用いられているが、安定な分子(メタンなど)を活性化するためにも魅力的な手法である。マイクロバブルを用いた化学合成は、触媒や担体という要素を排除できるという点で、要素反応を明らかにすることに適している。本研究課題で得られる知見は、OCMのみでなく、強い酸化剤を必要とする化成品の常温合成にも展開が期待できる。 R5年度はメタン/酸素/アルゴンの混合ガスのマイクロバブルを含む溶液を作成する装置を構成した。上記混合ガスの流量比をマスフローコントローラーで制御することで、反応次数などの速度論の議論を行うことを可能とした。水溶液に溶解する生成物の分析を、核磁気共鳴(NMR)や液体クロマトグラフィー(HPLC)で行えるようにした。さらに、この反応を行う水溶液にクロロ安息香酸などの様々なラジカル捕捉剤を導入することで、活性酸素種の議論を行うことが出来る。しかし、反応容器のガスリークが発生し、生成物の定量分析を行うことが出来ていないことが課題である。
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