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2023 年度 実施状況報告書

金属クラスターと表面有機官能基の協奏的触媒作用によるCH結合変換

研究課題

研究課題/領域番号 23K13602
研究機関横浜国立大学

研究代表者

長谷川 慎吾  横浜国立大学, 大学院工学研究院, 助教 (40964804)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワード金属クラスター / C-H結合活性化 / 表面有機官能基 / 協奏的触媒作用 / 固定化触媒 / 酸化的カップリング
研究実績の概要

2023年度における研究では金属クラスターと表面有機官能基の協奏的なC-H結合活性化の実現に向けて、(1)金属クラスターによるC-H結合活性化反応の探索、(2)固体表面を修飾する有機官能基のライブラリー拡張と触媒応用、(3)アルコール酸化反応におけるPdクラスターと表面アミノ基との協奏的触媒作用の実証に取り組んだ。
まず、金属クラスターによるC-H結合活性化反応を探索した結果、PdRuクラスターによるアレーン類の酸化的ホモカップリング反応を見出した。ベンゼンの酸化的ホモカップリング反応において、Pdクラスターの触媒回転数がRuとの合金化によって約4倍まで増加することを明らかにした。さらに、RhRu二元酸化物クラスターによるアレーンとカルボン酸との酸化的カップリング反応を見出し、分子状酸素を酸化剤として利用可能且つ基質適用範囲の広い優れた触媒反応系を実現した。
次に、固体表面に導入可能な有機官能基を検討した結果、シリカ表面に環状カーボネート・鎖状カーボネート・環状尿素・鎖状尿素を固定する手法の開発に成功した。さらに、シリカ表面に固定した環状カーボネートが、アルデヒドのヒドロシリル化反応に対して特異的に高い触媒活性を示すことを見出した。環状カーボネートと表面シラノールが協奏的にシランとアルデヒドを活性化することで反応を実現させていることを明らかにした。この成果については論文発表を行なった(JACS Au 2023, 3, 2692.)。
また、担持金属クラスターと表面有機官能基が協奏的なC-H結合活性化を起こす蓋然性を確認するため、アルコールの酸化的脱水素反応においてシリカ上のPdクラスターと表面アミノ基が協奏的な触媒作用を示すことを実証した。すなわち、シリカ担持Pdクラスターによるアルコール酸化の触媒回転数が表面アミノ基によって34%向上することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2023年度ではPdRuクラスターがアレーン類の酸化的ホモカップリング反応に対して特異的に高い触媒活性を示すことを見出した。ベンゼンの酸化的ホモカップリング反応において、Pdクラスターの触媒回転数がRuとの合金化によって約4倍まで増加し、既存のPd触媒を超える回転数453を達成した。これによってアレーンの酸化的カップリング反応に対するナノ合金触媒の有効性を実証した。また、RhRu二元酸化物クラスターが分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸との酸化的カップリング反応を進行させることを見出した。これまでの報告例では分子状酸素を酸化剤として利用可能且つ基質適用範囲の広い触媒反応系は存在しなかったため、非常に有用な新規触媒反応系を実現した。
また、固体表面を修飾する有機官能基のライブラリーを拡張するとともに、新規の固定化有機分子触媒としての応用にも成功した。すなわち、シリカ表面に固定した環状カーボネートが表面シラノールと協奏的にシランとアルデヒドを活性化することで、アルデヒドのヒドロシリル化反応を進行させることを見出した。固定していないフリーの環状カーボネートは全く触媒活性を示さないため、この研究成果は固体表面への固定化が不均一有機分子触媒の設計戦略となることを示している。また、この成果については論文発表を行なった(JACS Au 2023, 3, 2692.)。
加えて、アルコールの酸化的脱水素反応においてシリカ上のPdクラスターと表面アミノ基が協奏的な触媒作用を示すことを実証し、担持金属クラスターと表面有機官能基が協奏的なC-H結合活性化を起こす蓋然性を確認した。
上記の通り、先駆的かつ独創的な成果が得られているため2023年度については当初の計画以上に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

2023年度において得られた独創的な成果と知見に基づき、2024年度では金属クラスターと表面有機官能基による協奏的C-H結合活性化反応の実現を目指す。すなわち、金属クラスターによる新規なC-H結合活性化反応を開拓できているため、それらの触媒反応系に表面有機官能基を導入する。具体的には、アレーンの酸化的カップリング反応に有効なPdRuクラスター、あるいはアレーンとカルボン酸との酸化的カップリング反応に有効なRhRu酸化物クラスターを有機官能基で修飾した担体に担持し、触媒性能の向上を試みる。これまでの検討の結果から、PdRuクラスターおよびRhRu酸化物クラスターによるアレーンのC-H結合活性化過程ではカルボン酸が極めて重要であることがわかっている。そこで、表面カルボキシル基を導入した種々の担体を調製し、それにPdRuクラスター・RhRu酸化物クラスターを担持することで触媒を調製する。得られた触媒は溶媒量のカルボン酸を必要としないクリーンな反応系を実現するものと期待される。
表面有機官能基および金属クラスターの構造について詳細なキャラクタリゼーションを実施する。表面有機官能基については固体核磁気共鳴分光、フーリエ変換赤外分光、有機元素分析、および熱重量分析によって担体表面への導入量を定量し、分子構造の保持を確かめる。金属クラスターについては透過電子顕微鏡による形態観察・粒径評価・元素マッピング、粉末X線回折、X線光電子分光、およびX線吸収分光によって粒子サイズ・元素分布・酸化状態、そして有機官能基との相互作用を明らかにする。触媒反応の反応機構については、速度論的同位体効果や置換基効果を調査し、各成分の反応速度次数を初速度法で決定することで、その詳細を理解する。推定された反応機構に基づき理論計算を実施することでその裏付けを行う。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Low-Temperature N-Allylation of Allylic Alcohols via Synergistic Pd/Cu Catalysis: A Silica-Supported Dual-Metal-Complex Strategy2024

    • 著者名/発表者名
      Sakai Shunichi, Hasegawa Shingo, Ding Siming, Osuga Ryota, Nakajima Kiyotaka, Tanaka Shinji, Chun Wang-Jae, Motokura Ken
    • 雑誌名

      ACS Catalysis

      巻: 14 ページ: 4835~4846

    • DOI

      10.1021/acscatal.4c00638

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Design Strategy of Metal Nanoparticle Catalysis for C-H Bond Activation Reactions2024

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Shingo, Motokura Ken
    • 雑誌名

      ChemCatChem

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1002/cctc.202301531

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Concerted Hydrosilylation Catalysis by Silica-Immobilized Cyclic Carbonates and Surface Silanols2023

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Shingo, Nakamura Keisuke, Soga Kosuke, Usui Kei, Manaka Yuichi, Motokura Ken
    • 雑誌名

      JACS Au

      巻: 3 ページ: 2692~2697

    • DOI

      10.1021/jacsau.3c00306

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] RhRu触媒によるアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング反応2024

    • 著者名/発表者名
      長谷川慎吾・本倉健
    • 学会等名
      第133回触媒討論会
  • [学会発表] ナノ合金触媒によるアレーンとアルキンの酸化的脱水素カップリング2024

    • 著者名/発表者名
      楠碧彩・長谷川慎吾・本倉健
    • 学会等名
      第133回触媒討論会
  • [学会発表] シリカ固定化環状カーボネートによるヒドロシリル化反応の機構解析2023

    • 著者名/発表者名
      曽我 紘祐, 中村 圭佑, 臼井 慧, 眞中 雄一, 長谷川 慎吾, 本倉 健
    • 学会等名
      第12回JACI/GSCシンポジウム
  • [学会発表] 担持パラジウムナノ粒子触媒によるアレーン類の酸化的脱水素カップリング反応2023

    • 著者名/発表者名
      徳竹 駿太・長谷川 慎吾・本倉 健
    • 学会等名
      第12回JACI/GSCシンポジウム
  • [学会発表] 貴金属ナノ合金触媒によるアレーンのアセトキシル化反応2023

    • 著者名/発表者名
      長谷川慎吾・本倉健
    • 学会等名
      第132回触媒討論会
  • [学会発表] 担持パラジウムナノ粒子触媒によるアレーン類の酸化的脱水素カップリング反応2023

    • 著者名/発表者名
      徳竹駿太・長谷川慎吾・本倉健
    • 学会等名
      第132回触媒討論会
  • [学会発表] シリカ固定化環状カーボネートおよび環状ウレアによるヒドロシリル化反応の機構解析2023

    • 著者名/発表者名
      曽我紘祐・長谷川慎吾・中村圭佑・臼井慧・眞中雄一・本倉健
    • 学会等名
      第132回触媒討論会
  • [学会発表] シリカ固定化環状カーボネート・環状ウレアによるヒドロシリル化触媒作用2023

    • 著者名/発表者名
      曽我 紘祐・中村 圭佑・臼井 慧・眞中 雄一・長谷川 慎吾・本倉 健
    • 学会等名
      第13回CSJ化学フェスタ2023
  • [学会発表] RhRu Bimetallic Catalyst for Acetoxylation of Arenes2023

    • 著者名/発表者名
      Shingo Hasegawa, Ken Motokura
    • 学会等名
      International Symposium on Catalysis and Fine Chemicals 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Exploration and Mechanism of Hydrosilylation Catalysis of Silica-Immobilized Cyclic Carbonate and Urea2023

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Soga, Shingo Hasegawa, Keisuke Nakamura, Kei Usui, Yuichi Manaka, Ken Motokura
    • 学会等名
      International Symposium on Catalysis and Fine Chemicals 2023
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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