研究課題/領域番号 |
23K13605
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
別府 孝介 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 助教 (20824882)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酸素発生反応 / 酸化ルテニウム / 劣化機構 |
研究実績の概要 |
応募時の研究目的は電極触媒と基材の間にバッファ層を導入し,固溶体の形成による接着性の向上と電子状態の改質により溶出性の低減を達成するとしていた。そのため令和5年度は原子層堆積法を用いたバッファ層の膜厚の最適化を行うことを予定していた。しかしながら、バッファ層を導入してしまうと、いずれの膜厚においても溶出量の増加が認められてしまい、バッファ層による耐久性の向上効果はあまり認められないことが分かった。そこで計画を見直し、酸性電解液中における電極触媒の劣化機構の解析へと展開することにした。 アノード触媒の候補の一つである酸化ルテニウム(RuO2)は、酸性溶液中における酸素発生反応中に触媒成分が溶出する問題がある。RuO2の触媒溶出について、酸素発生反応における格子酸素機構が関与しているとされているが、その詳細は充分に明らかとなっていない。そこでモデル触媒としてRuO2並びに高耐久性が報告されているロジウムドープ酸化ルテニウム(Rh-RuO2)を選定し、2種類の触媒間の劣化機構の差異を比較した。我々の検討系においてもRh-RuO2触媒は未ドープのRuO2 触媒と比較して約2倍もの耐久性を示すことが認められた。耐久性試験前後の電極触媒の状態をO1s XPSにより比較すると、Rh-RuO2触媒ではほとんど変化が認められなかったが、未ドープのRuO2触媒は格子酸素由来のピークの著しい減少が認められた。これは、Rh-RuO2触媒は未ドープのRuO2 触媒と比較して格子酸素の利用度が著しく低く、耐久性の差には格子酸素の利用度の差が寄与していること示していると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも述べたように,当初予定していたバッファ層の導入とは異なる、劣化機構に関して検討することにした。バッファ層の導入も溶出や剥離を抑え、耐久性の向上を目指すことを目的としていたため,手段は異なるが、耐久性向上の指針の獲得という点においては,大まかな研究の方向性は維持できると考えている。しかしながら対象が異なるので研究計画を変更する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請書において提案していた内容とは異なるが.酸化ルテニウム触媒の劣化機構の解明を主軸に進めることを予定している。本年度はこれまで進めることが出来ていなかった、触媒の調製方法の最適化、触媒耐久性のpH依存性の検討、ならびに高耐久触媒電極のPEM型水電解システムへの適用を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に物品購入を予定していたが,その必要がなくなったため、次年度使用額が生じた。 該当分については消耗品費として計上する。
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