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2023 年度 実施状況報告書

毛髪再生医療のためのヒト毛乳頭細胞の重層化培養法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K13615
研究機関地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所

研究代表者

エン 雷  地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「毛髪再生医療実証グループ」, 研究員(任期有) (20966105)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワード毛髪 / 再生医療 / 毛乳頭細胞 / 幹細胞培養
研究実績の概要

脱毛症は生命には直結しないものの、外見に与える影響は大きく、進行するとしばしば自尊心やメンタルヘルスに深刻な影響を与える。男性型脱毛症と呼ばれる疾患の治療には、男性ホルモンの還元酵素を阻害する薬剤が効果的であり、自毛植毛という外科的処置も行われている。しかし、これらの治療法では脱毛の進行を抑えることはできても、毛髪を再生させるのは難しいとされている。そのため、細胞そのものを利用した再生医療が注目されており、特に毛髪再生医療では後頭部の毛包組織から幹細胞を取り出し、生体外で増殖させた後、脱毛部に移植する方法が研究されている。

そこで、我々は生体外で細胞を増殖させる過程における独自の培養技術である重層化培養法を開発した。この技術により、毛乳頭細胞の機能を維持しながら増殖させることに成功し、国際特許を取得した。毛乳頭細胞は毛包内でヘアサイクルを制御しており、この技術により高い活性を持つ毛乳頭細胞を得ることができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

このプロジェクトでは、脱毛症患者の毛包組織から毛乳頭細胞を採取し、培養フラスコを用いて一般的な継代培養を行った。その結果、毛乳頭細胞の発毛関連遺伝子であるALPやVersicanは数回の継代でほぼ消失した。培養期間を30日まで延長し、ヒト毛包由来の毛乳頭細胞の機能を維持しながら増殖培養可能な重層化培養技術の確立に取り組んだ。その結果、細胞は重層化し、初期の20倍まで増殖した。また、発毛関連遺伝子の発現変化において、培養フラスコ(2D)で培養された毛乳頭細胞と比較して、ALP遺伝子の発現が大幅に改善された。従来、毛乳頭細胞はスフェロイドを形成することで機能が回復することが知られていたが、スフェロイドを形成すると増殖しないという問題があり、重層化培養では、細胞数を増加させつつ、発毛関連遺伝子の発現も大幅に改善されることが示された。発毛プロセスは複雑であり、いくつかの発毛関連遺伝子の発現だけでは細胞の発毛活性を完全に評価することはできない。そこで、我々は重層化培養したヒト毛乳頭細胞をマウス胎児由来の上皮系細胞と混合し、マウスの皮下に移植するパッチ試験を行った。その結果、培養5日目の毛乳頭細胞と比較して、重層化培養の毛乳頭細胞の発毛効率は約7倍に向上した。

今後の研究の推進方策

今後の方針としては、重層化培養の原理解明を取り込み、また臨床研究に向けて、生物由来原料基準に対応済の培地により重層化培養か可能かどうかを確認していく。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Cinnamic acid promotes elongation of hair peg-like sprouting in hair follicle organoids via oxytocin receptor activation2024

    • 著者名/発表者名
      Kageyama Tatsuto、Seo Jieun、Yan Lei、Fukuda Junji
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 14 ページ: 235

    • DOI

      10.1038/s41598-024-55377-y

  • [雑誌論文] Effects of oxytocin on the hair growth ability of dermal papilla cells2023

    • 著者名/発表者名
      Kageyama Tatsuto、Seo Jieun、Yan Lei、Fukuda Junji
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 181

    • DOI

      10.1038/s41598-023-40521-x

  • [学会発表] Multilayer culture of dermal papilla cells promotes its growth while maintaining its hair inductive ability2023

    • 著者名/発表者名
      Lei Yan, Tatsuto Kageyama, Junji Fukuda
    • 学会等名
      World Congress of Hair Research 2024
    • 国際学会
  • [学会発表] Dense-layered culture of human dermal papilla cells promotes proliferation while maintaining trichogenic activity2023

    • 著者名/発表者名
      Lei Yan, Tatsuto Kageyama, Junji Fukuda
    • 学会等名
      Lei Yan, Tatsuto Kageyama, Junji Fukuda
    • 国際学会
  • [産業財産権] 間葉系細胞の培養方法、活性化間葉系細胞の製造方法、毛包原基の製造方法、間葉系細胞の活性化方法、及び上皮系細胞の活性化方法2023

    • 発明者名
      福田淳二, 景山達斗, YAN LEI
    • 権利者名
      KISTEC、横浜国立大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2023/6551
    • 外国

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公開日: 2024-12-25  

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