研究課題/領域番号 |
23K13624
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
三澤 賢明 福岡工業大学, 工学部, 助教 (00823791)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | フォノン / 結晶粒界 / 2次元物質 / 積層構造 |
研究実績の概要 |
携帯通信機器やメディア機器の発展に伴い,表面弾性波を自由自在に制御する技術のさらなる高度化が求められている.特に,テラヘルツ帯域の超高周波弾性波を制御する技術を確立することは,次世代の高速通信技術開発の鍵である.物質表面におけるフォノン分散関係に基づくと,特定の周波数をもつ弾性波を特定の経路に沿って伝播させる弾性波導波路を設計することが可能である.この方法でテラヘルツ帯域の弾性波導波路を実現するためには,ナノスケールの構造を利用することが必要不可欠である.本研究課題では,第一原理計算によってこれらの2次元材料における結晶粒界および積層構造に基づいて界面フォノンを制御する方法論を確立することを目指す. 初年度は,グラフェンナノリボンのもつエッジ構造に着目し,アームチェア型のエッジ同士を半周期平行移動して接合することで線欠陥型の結晶粒界モデルを作成した.この結晶粒界を含む単層グラフェンのフォノン分散関係を解析したところ,50THz付近と12THz付近に結晶粒界に局在した界面フォノンモードが生じることが明らかになった.さらに,この結晶粒界を含むグラフェンに六方晶窒化ホウ素を積層した構造を作成し,同様の解析を行なったところ,50THz付近と12THz付近に加えて42THz付近に新たな界面フォノンモードが生じ,これらのモードではグラフェンの結晶粒界とともに積層した六方晶窒化ホウ素層も同時に振動していることが分かった.以上の結果は,積層構造を用いることによって新たな周波数帯域に界面局在フォノンを励起できる可能性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り,線欠陥型の結晶粒界を導入した単層グラフェンにおけるフォノン分散関係の解析を行い,結晶粒界に局在したモードの存在を確認した.また,このグラフェンに六方晶窒化ホウ素を積層した系におけるフォノン分散関係を解析し,物質の積層がフォノン伝播特性に及ぼす影響について解析を進めている.しかしながら,初年度に作成・解析を行なった結晶粒界モデルは1種類のみに留まっており,当初の想定に比べると研究の進捗はやや遅れていると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
第2年度の研究の推進方策を以下に示す: (1)初年度に解析対象としたアームチェア型エッジ構造を用いた結晶粒界に加え,よりバリエーションに富むカイラル型エッジ構造を用いた結晶粒界モデルを作成してフォノンモードを解析することで,さらに高度なフォノン特性制御の実現可能性を探る. (2)第一原理計算により検証した構造モデルを用いて古典的分子動力学法による弾性波伝播のシミュレーションを実現するため,結晶粒界を含む系におけるフォノンの性質を表現可能な原子間相互作用ポテンシャルおよびパラメータについて検証を行う.また,その結果に応じて機械学習原子間相互作用ポテンシャルの構築を検討する. (3)トポロジカル・フォノニクスの適用によるロバストな弾性波導波路の設計指針の確立に向け,結晶粒界に局在したフォノンバンドのもつトポロジカルな性質について詳しく解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
以下に挙げる理由により次年度使用額が生じた: (1)研究代表者の所属変更に伴い,当初予定していた研究用ワークステーションの導入を一旦保留とし,新たな所属先で研究を継続するための機器・ソフトウェアライセンス等の購入に充てたため. (2)期間中に研究代表者の体調不良により学会発表および出張を取りやめたことがあったため. 次年度は,初年度に保留としていた研究用ワークステーションの導入を行い,やや遅れている研究進捗の加速を図る.
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