研究課題/領域番号 |
23K13647
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 道貴 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10963225)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ストレッチャブルエレクトロニクス / コルゲート加工 / センサ / 圧電薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究では,垂直方向に波状に加工した金属箔の上に,異なる種類のセンサを高密度に集積した,縦波型多機能ストレッチャブルセンサの開発を目的としている.本研究ではそのための手法として,まず金属箔上に複数の薄膜センサを集積化したうえで,金属箔・集積化した薄膜センサをマイクロコルゲート加工によりまとめて縦波構造に加工し伸縮性を付与することを考えている. 本年度はまず,金属箔上にセンサを形成した後,コルゲート加工によって縦波構造を形成することの可否,ならびに制約条件を明らかにすることを目指し,Al箔金属基板上にPVDF有機圧電薄膜を形成後,コルゲート加工によって縦波構造に加工することを検討した.PVDF有機圧電薄膜の形成法としてはディップコーティングによる成膜を試み,引き上げ速度を変えることで1~8μmの膜厚の有機圧電薄膜を形成することに成功した.また,厚さの異なるPVDF有機圧電薄膜をコルゲート加工によって縦波構造に加工した結果,コルゲート加工後に高アスペクト比を得るためには金属箔上に形成する有機圧電薄膜が薄い必要があること,具体的には,金属箔として厚さ11μmのAl箔を用いた場合,PVDF膜の厚みを5μm厚以下に抑えることで,目標としていた30%以上の伸縮性が得られることを明らかにした.また実際に50%以上の伸縮性を示すストレッチャブル圧電センサを試作し,試作したセンサを用いて,指の曲げの検出が行えることを確認した. また,温度センサの集積化を念頭に,金属箔上に絶縁膜を介してパターン付き金属配線を形成した後,コルゲート加工によって縦波構造へと加工することを試みた.一方,同構造においては,金属箔・絶縁膜が厚いと,金属配線に大きな曲げ応力がかかってしまい,クラックが生じて抵抗値が安定しなかった.今後,コルゲート加工時の応力を低減する方法をさらに検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は,金属箔上にセンサを形成した後,コルゲート加工によって縦波構造を形成することの可否,ならびに制約条件を明らかにすることを目指し,実際に有機圧電薄膜を金属箔上に形成した後、コルゲート加工によって縦波構造に加工することを検討し,センサ層の厚みの影響について知見を得た.同知見は,提案しているプロセスの実現における重要な部分を占めており,1年目の進捗としては順調であると言える. 一方,温度センサの集積化を念頭に行った,金属箔上に絶縁膜+パターン付き金属配線を形成した後,コルゲート加工によって加工した場合については,曲げ応力の影響により抵抗値が安定しないという結果となった.同部分については,さらなる検討が必要である. 上記をふまえて,総合的には,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,金属箔上にセンサを形成した後,コルゲート加工によって縦波構造を形成することの可否,ならびに制約条件を明らかにすることを目指し,実際に有機圧電薄膜を金属箔上に形成した後、コルゲート加工によって縦波構造に加工することで,縦波型圧電ストレッチャブルセンサを試作した.また,提案プロセスを用いたストレッチャブル温度センサの集積化についての検討を開始した. 次年度は,引き続きストレッチャブル温度センサの検討を進めると共に,さらなるセンサの金属箔上への集積化・ストレッチャブルセンサの付与を試みる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、1年目に圧電薄膜の特性評価用に圧電薄膜評価装置を導入予定であったが、諸事情により導入できず、自作の評価系にて代用したため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、薄膜センサ形成・特性評価に用いる予定である。
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