研究課題/領域番号 |
23K13653
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研究機関 | 呉工業高等専門学校 |
研究代表者 |
氷室 貴大 呉工業高等専門学校, 電気情報工学分野, 准教授 (70803964)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | マイクロデバイス / DNA / インピーダンス計測 / 微細電極 / 直流電界 |
研究実績の概要 |
DNAをセンシング材料として活用するため,その細長い分子を特定の位置に展開する方法として直流電界を用いた方法を採用し,その挙動調査を行った.このとき,フォトリソグラフィー技術を用いて3cm角のガラス基板上に薄膜電極のパターン形成を行った.そして,薄膜電極を通して直流電圧を印加した際のDNAの形態について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察し,その電気的特性について評価を行った.具体的には,ガラス基板中心部に2μLのDNA溶液を滴下し,液滴を挟みこむような形で5Vの直流電圧を印加した.そして,基板を自然乾燥させ, DNAの形態観察およびその周波数特性計測を実施した.結果として,直流電界を印加することでDNAは複雑なネットワーク構造を形成することが示唆された.これは,DNAは液中では絡まった状態で存在しており,直流電圧を印加すると,その両端に分極作用が生じ,DNAが複数本絡まった状態のまま電界方向に伸ばされたためだと考えられる.そして,その電気的な特性について,交流インピーダンス法を用いることにより評価を行った.この際の測定には,インピーダンスアナライザ(HIOKI・IM3570)を用いた.周波数を100Hzから5MHzまで掃引したところ,電極間に展開されたDNAネットワーク構造の複素インピーダンスプロットは大きな半円(低周波域:100~5kHz)と小さな半円(高周波域:5k~5MHz)から成る形状を有することが確認された.その結果から,DNAが固定化された電極間の等価回路は,RC並列回路が2つ直列に連なった形になると推測された.比較実験として,同デバイスにDNA溶液を滴下し,直流電界を印加しなかったサンプルを用意した.その周波数特性計測を実施したところ,特に周波数500Hz~100kHzの間では,インピーダンスの値が印加しない場合の約0.1倍に減少していることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究実施計画に記載した微細電極の設計及び作製,電極間に形成されたDNAネットワーク構造の観察やその電気的特性評価など,全ての計画内容を実施し,当初目標としていた成果を得ることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果として,手のひらサイズのガラス基板を用いて微小電極デバイスを設計・製作を行い,その電極上にDNAのランダムなネットワーク構造を形成することに成功した.今後の実験として,まずは直流電界の印加時間,DNAの溶液濃度や電極形状を最適化することでDNAネットワークを再現性良く形成する条件を見い出し,その電気的な特性を評価する. そして,その等価回路モデルを構築することで,DNA束やDNAネットワークなど,DNAが構築する形状に対する電気的な特性について,より詳細に評価を行う.本研究においては,この網目状のDNAネットワークの特性を利用して,心筋梗塞等の診断マーカーとして期待されるDNA分解酵素を簡便かつ高感度に計測する技術を構築する.微細な2つの電極間に複雑に形成されたDNAネットワークに対してDNA分解酵素を反応させると,その酵素濃度や活性に応じて切断されるDNAの本数が異なり,それに応じたインピーダンスの変化が生じると予想される.このように,DNAの切断に伴うインピーダンス変化により,DNA分解酵素を検出することが可能となると考えられる.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度において解析用のPC,マニュアルプローバー,スピンコーター等を導入する必要性が生じており,それぞれ2024年度の予算と合算しての購入を検討しているため.研究計画に沿って実験を実施していき,優先度の高い順に備品を導入していく予定である.
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