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2023 年度 実施状況報告書

らせん磁性スピントロニクスの実現に向けた物質機能開拓

研究課題

研究課題/領域番号 23K13654
研究機関東北大学

研究代表者

増田 英俊  東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20849278)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2025-03-31
キーワードスピントロニクス / キラリティー / スピン移動トルク
研究実績の概要

本研究ではらせん磁性体が持つ右巻き・左巻きに対応するキラリティー(ヘリシティー)自由度の制御・検出手法を実証、高度化し、キラリティー自由度を記憶媒体として用いるらせん磁性スピントロニクスの可能性を追求する。本年度は主に以下の2つの内容を進めた。
1. らせん磁性薄膜MnAu2における室温キラリティースイッチング:らせん磁性合金MnAu2の薄膜試料を用い、キラリティーが室温で制御・検出できることを示した。特に弱磁場中で電流パルスを印加することで、キラリティーを繰り返し反転できることを示した。これにより、キラリティーの制御・検出手法を大幅に簡単化し、室温動作を実証することでらせん磁性スピントロニクスの可能性を拓いた。
2. らせん磁性キラリティーのゼロ磁場検出:らせん磁性金属MnAu2と、スピンホール材料であるPtの2層構造を作製し、その輸送特性を詳細に調べた。その結果、らせん磁性MnAu2において電流によって非平衡な伝導電子スピン偏極が生じること、これがPt層へのスピン拡散と逆スピンホール効果を通じて、2層膜デバイスの横抵抗として検出できることを明らかにした。この横抵抗の符号はキラリティーに依存し、ゼロ磁場でも発現することから、この効果を用いてキラリティーがゼロ磁場においても検出可能であることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の中心課題は、らせん磁性体におけるキラリティー自由度の制御、検出手法を確立、高度化することである。この点で、キラリティーの室温での制御・検出、電流パルスによる繰り返しキラリティー反転、らせん磁性/スピンホール材料2層膜におけるゼロ磁場キラリティー検出は、スピントロニクス応用に向けた大きな進展である。このことから研究はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

MnAu2/Pt 2層膜デバイスにおけるゼロ磁場キラリティー検出の成功から示唆されるように、らせん磁性体と他の物質の界面効果を利用することでさらなる機能化が期待できる。そこで今後はらせん磁性体と強磁性体の2層膜などを作製し、その振る舞いを詳細に調べることで、らせん磁性スピントロニクスデバイスのさらなる高度化を推し進める。

次年度使用額が生じた理由

「その他」として論文投稿料、オープンアクセス費を計上していたが、大学のAPC支援制度を利用することで不要となった。また、精密測定機器の購入を次年度に繰り越した。次年度使用額は、精密測定用測定器(ロックインアンプ、プリアンプ)の購入、液体ヘリウムの購入費用に充当する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Room temperature chirality switching and detection in a helimagnetic MnAu2 thin film2024

    • 著者名/発表者名
      Masuda Hidetoshi、Seki Takeshi、Ohe Jun-ichiro、Nii Yoichi、Masuda Hiroto、Takanashi Koki、Onose Yoshinori
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 15 ページ: 1999

    • DOI

      10.1038/s41467-024-46326-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 集束イオンビームを活用したらせん磁性スピントロニクス材料の開拓2023

    • 著者名/発表者名
      増田英俊
    • 学会等名
      第11回東北大学若手研究者アンサンブルワークショップ
  • [学会発表] らせん磁性スピントロニクス: 磁気的キラリティーの制御・検出・活用2023

    • 著者名/発表者名
      増田英俊
    • 学会等名
      酸化物研究の新基軸に向けた学術討論会「新進気鋭の若手研究者による酸化物研究の化学と物理の融合深化と新奇展開」
    • 招待講演
  • [学会発表] らせん磁性金属MnAu2における電流誘起スピン偏極の観測によるキラリティーのゼロ磁場検出2023

    • 著者名/発表者名
      増田英俊, 関剛斎, 大江純一郎, 新居陽一, 高梨弘毅, 小野瀬佳文
    • 学会等名
      第143 回 金属材料研究所講演会
  • [学会発表] Helimagnet-based spintronics: control and detection of magnetic chirality2023

    • 著者名/発表者名
      Hidetoshi Masuda, Takeshi Seki, Jun-ichiro Ohe, Yoichi Nii, Hiroto Masuda, Koki Takanashi, Yoshinori Onose
    • 学会等名
      Summit of Materials Science 2023 and GIMRT User Meeting 2023
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] らせん磁性スピントロニクスの試み: 磁気的キラリティーの制御と検出2023

    • 著者名/発表者名
      増田英俊
    • 学会等名
      第10回東北大学若手アンサンブルワークショップ
  • [学会発表] らせん磁性金属 MnAu2 における電流誘起スピン偏極の観測によるキラリティー検出2023

    • 著者名/発表者名
      増田英俊, 関剛斎, 大江純一郎, 新居陽一, 高梨弘毅, 小野瀬佳文
    • 学会等名
      日本物理学会2023年春季大会
  • [学会発表] Helimagnet-based spintronics: control and detection of magnetic chirality2023

    • 著者名/発表者名
      Hidetoshi Masuda, Takeshi Seki, Jun-ichiro Ohe, Yoichi Nii, Hiroto Masuda, Koki Takanashi, Yoshinori Onose
    • 学会等名
      The 70th JSAP Spring Meeting 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Room-temperature chirality switching in a helimagnetic thin film2023

    • 著者名/発表者名
      Hidetoshi Masuda, Takeshi Seki, Yoichi Nii, Hiroto Masuda, Koki Takanashi, Yoshinori Onose
    • 学会等名
      APS March Meeting 2023
    • 国際学会
  • [備考] Downscaling Storage Devices

    • URL

      https://www.tohoku.ac.jp/en/press/downscaling_storage_devices_magnetic_memory_based_on_chirality.html

  • [備考] らせん磁性体のねじり方向を利用する室温駆動の新型メモリの動作を実証

    • URL

      https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/03/press20240308-01-temperature.html

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公開日: 2024-12-25  

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