研究課題/領域番号 |
23K13660
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石川 諒 大阪大学, 大学院工学研究科, 招へい研究員 (50857696)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | スキルミオン / VCMA / 新原理コンピューティング / スピントロニクス / ブラウン運動 / スパッタリング |
研究実績の概要 |
ブラウン運動を示す磁気スキルミオンを用いた新原理コンピューティングの実現に向けた試みとして、2023年度は(1)電極を同一面上に形成したデバイスの作製と外部からの制御性の評価、(2)スキルミオン間の情報の流れの評価の2つの内容を実施した。本研究ではスキルミオンが出現する磁性多層膜をマグネトロンスパッタリング法により作製した。膜構造および各層の膜厚により垂直磁気異方性を制御し、任意の温度範囲でスキルミオンが出現する試料を作製し、微細加工によりいくつかの異なるデザインのデバイスを作製した。 (1)について、磁性層の磁気パラメータに傾斜を形成可能なデバイスでは傾斜の向きに応じてスキルミオンがブラウン運動する様子が確認できた。このデバイスにおいてスキルミオンの運動を詳細に解析すると、スキルミオンの運動は拡散的な振る舞いとドリフト的な振る舞いの両方を示す可能性が示唆された。 (2)について、量子ドットセルラーオートマトンをスキルミオンで模した素子を作製し、評価した。具体的には1つのセルに2つのスキルミオンを閉じ込めたセルを複数並べた多数決回路を実装し、ブラウン運動とスキルミオン間の反発相互作用によりゆらぐスキルミオンの配列を確率的な時系列データとして扱い、1つのセル内部のスキルミオン同士および異なるセル内のスキルミオンについて、相互情報量と移動エントロピーを評価した。評価の結果、セル内のスキルミオン間で情報が伝達する速度が従来の研究よりも約20倍高速であることや異なるセル内のスキルミオン同士の相互作用が非常に弱く、セルの間隔が重要なパラメータであることが明らかになった。 スキルミオンの運動、スキルミオン間の情報のやりとりに関する知見を得ることでスキルミオンを情報担体として用いる新原理のコンピューターの評価が可能になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
磁気異方性の傾斜を用いたデバイスにおけるスキルミオンの運動について外部制御を行う上で重要な知見を得たため。 ただし、その他に試作した素子ではスキルミオンの外部制御ができておらず、より低エネルギーで動作するデバイスのデザインを考案する必要があるため。 スキルミオン間の情報流れの解析について、当初予定していなかった成果が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きスキルミオンの外部制御を省エネルギーで行うデバイスの作製と評価を行う。 電界を利用した磁性層の磁気パラメータ変調を利用した素子を作製する予定である。 外部制御によりスキルミオン素子への情報入力を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費について、研究開始前から所有していた材料や消耗品を用いたため、計画よりも執行額が少なくなったため未使用が生じた。 旅費について出張計画を調整したために未使用が生じた。 物品費の未使用分については、新規材料や消耗品の購入経費に、旅費については、国内・国際学会の参加旅費に充てる予定である。
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