研究課題
X線CT は医療画像診断装置の一種であり、現代医療の画像診断の根幹をなす重要技術である一方、複数回撮影時の医療被ばくが課題である。X線CT の性能は初段のシンチレータ部に強く依存しており、被ばく量低減のためには既存材料よりも高い発光量と低い残光値を示す新規シンチレータの開発が必要である。本研究では、原理的に高い発光量と低い残光値が期待できるヨウ化物の透明多結晶シンチレータの作製条件を確立し、それらの光学およびシンチレーション特性を系統的に評価する。初年度はNaI透明セラミックスの作製手法を確立し、TlやInなどの発光中心を添加したシンチレータを開発した。
2: おおむね順調に進展している
放電プラズマ焼結を行う前段階として、原料粉末の混合時に綿密な水分コントロールを行うことによって、高い透明性を有するTl添加NaIセラミックスが合成できた。吸収波長・発光波長・減衰時定数は既存のTl添加NaI単結晶と同様の結果を示し、透明セラミックスにおいてもTl+に起因したシンチレーションを観測できた。Tl濃度依存性を調査したところ、0.1%で最適となり、シンチレーション発光量は36,000 ph/MeVであった。このことから、本研究で作製したTl添加NaI透明セラミックスは単結晶に匹敵するシンチレーション発光量を有すると結論付けることが出来る。
初年度は単結晶と同程度の性能を有するTl添加NaI透明セラミックスの開発に成功したため、次年度は他のアルカリ金属ヨウ化物の透明セラミックスの作製手法を確立し、発光中心の添加およびシンチレーション特性の評価を行う。
購入を予定していた物品の納期が年度内に間に合わないため、次年度に予算を繰り越した。
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