研究課題/領域番号 |
23K13696
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大槻 貴司 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60870003)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | エネルギーシステム / 重要鉱物 / カーボンニュートラル / リチウムイオン電池 / 再生可能エネルギー / 線形計画法 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、【1】1時間値の時間解像度を有する世界エネルギー需給モデルの開発、および【2】世界エネルギー・鉱物需給モデルの開発を実施した。 【1】では、再生可能エネルギー(再エネ)や蓄電池の技術評価の精緻化を目的に、世界(100地域区分)のエネルギーシステム全体を包含しつつ、電力・水素需給は1時間刻みで最適化計算するモデル「NE_Global-R」を開発した。そして、同モデルを用いて、2050年CO2正味ゼロ排出に向けて最適なエネルギー構成や蓄電池導入量等を評価した。その結果、再エネやCO2回収・貯留、原子力などの様々な技術を活用することが世界全体として最適であり、2050年の世界電源構成における太陽光・風力発電の最適比率は57%と評価された。また、再エネ100%のエネルギーシステムに関しては、CO2削減費用が倍増する等の経済的課題が示唆された。 【2】では、NE_Global-Rの定式化を拡張し、重要鉱物の資源制約や物量バランスを考慮したモデル「NE_Global-R_M」を開発した。分析対象の重要鉱物としては、リチウムイオン電池(LIB)の素材であるリチウム・コバルト・ニッケルとした。モデル化にあたっては、重要鉱物の資源量に関する文献調査を実施し、また、LIB以外の鉱物需要については計量経済手法および文献調査から将来見通しを作成した。そして、同モデルを用いて、2050年の世界における電力系統用・車載用LIBの最適導入量等を検討した。その結果、コバルト資源量が将来のLIB導入を制約する可能性があり、コバルト使用量を抑制する技術が重要となることが示唆された。 上記の通り、時間解像度やエネルギー・鉱物需給の統合化の点で、本研究は独自性を有するモデルを開発した。さらに、開発モデルを基に、エネルギー・鉱物資源政策の観点から重要な示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界エネルギー需給モデルの時間解像度の詳細化は、当初計画の範囲を超えた成果を上げることができた。また、本研究課題の主目的である世界エネルギー・鉱物需給モデルの開発については、当初の計画通り、リチウム・コバルト・ニッケルの資源量制約や物量バランスの定式化を実施できた。リチウムイオン電池以外の鉱物需要についても、計画通り、計量経済的手法や文献調査を基に将来見通しを作成した。以上を総合的に踏まえて、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
世界エネルギー・鉱物資源モデルについて、鉱物資源制約を克服するための方策のモデル化と分析を実施する。具体的には、リチウムイオン電池(LIB)の代替技術や、LIBの素材鉱物の省資源化・リサイクル技術をモデルに追加する。そして、拡張モデルを用いて、代替技術導入のインパクトや、省資源化・リサイクルの最適実施量、CO2削減費用に及ぼす効果などを定量化する。
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